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アナログ写真は存在しない! ― たとえ存在するとしても余命わずか ―

 この世の全ての物質の最小構成単位は原子という粒子であり、それがいくつか結合して分子になり、ついには物質となるので、超高分解能なミクロの眼で見れば、全てデジタル的なのです。ただし、原子は、電子顕微鏡でも見ることは、ほとんど不可能なくらい極微小サイズのものですので、それが集合して構成されている物質はアナログ的とも言えます。
さらに以下に述べることなどから、慣用法としては仕方ないのですが、『アナログ写真』と『デジタル写真』という区別は厳密に言えば正しくありません! もっとも、デジタルカメラが出現するまでは、単に『写真』で十分であり、『アナログ写真』という呼び方はなかったと思います。デジタル写真は今や高解像度になってきて、ますますアナログ的になってきています。ただし後述のように、出力側に大きな問題や限界があります。なので、正しくは、たとえば次のような分類にすべきでしょう。『銀塩写真』と『電子写真』、『非電子写真』と『電子写真』、『化学写真』と『電子写真』、『旧式写真』と『新式写真』などです。もっとも、いずれ『アナログ写真』は消滅しますので、こんな分類は不要になりますが。


人間の眼の分解能・解像度について

 視力1.0の人が、眼から40cm離れたところにある2点を見た場合、2点の間隔が約0.1mm以上離れていないと2つの点として識別できず、まるで1つの点のように見えます。よって、人間の眼の分解能・解像度は、およそ0.1mmとなります。なので、次の図のように、四角い点の間隔が0.1mm以下の画像であれば、肉眼的には実線に見えます。


 関連してHBの鉛筆でコピー用紙に普通に書いた太さが約0.8mmの線について述べます。下記の写真に示しますように、肉眼では完全に繋がったアナログ的な線に見えますが、顕微鏡で拡大して見ればザラザラでデジタル的であることがわかります。アナログ写真でも同様のことが言えます。

鉛筆で普通に書いた線
その下の物差しの目盛の間隔は1mm
 
 左記の鉛筆の線の顕微鏡写真
鉛筆の鉛成分がデジタル的に塗布されていることがわかる(以下の全ての顕微鏡写真は同一倍率)

  顕微鏡で撮影した被写体の実際のサイズを知るために、対物ミクロメーターを撮影しました。それを次に示します。この1目盛が10μm(1x10-5m)ですので、この目盛り全体の幅は1mmです。従って、この写真と以下の顕微鏡写真の幅を同じにすれば、そのまま測定可能となります。ちなみに、写真全体の実際の横幅は約4mmですので、比例計算によって被写体の各部分の実寸が計算できます。

対物ミクロメーターの顕微鏡写真

本原稿の中に掲載されている顕微鏡写真は、全てこれと同一倍率で撮影しており、トリミングは一切していないので、この目盛がそのまま物差しになる。


銀塩写真の解像度について

 塩化銀や臭化銀などのハロゲン化銀1分子のサイズを0.3nm(=0.3x 10-9m)と仮定して、35mmフイルムの縦24mm中に単分子膜として隙間なくぎっしりと並んでいるとすると、その分子の総数は8 x 107個となります。同様に横36mm中には1.2 x 108個となります。よって、35mmフイルム1コマ中には8 x 107 x 1.2 x 108 = 9.6 x 1015 ≒ 1 x 1016 個となり、なんと1 x 1016 ピクセルで、天文学的な画素数になります。しかし、銀塩写真の画素数は1000万(1 x 107)画素相当程度と一般に言われており、現在では2000万画素以上のデジタルカメラが多数普通に市場にあり、中には3000万画素を超えるものまで出現していて、今やデジタル写真の解像度が銀塩写真を超えているとよく言われている根拠となっているのですが、上記の計算結果とは桁が大きく異なり、全く桁違いです。もっとも、ハロゲン化銀の分子をフイルム面上に分子間の隙間が無く単分子膜状に塗布することは技術的に不可能であり、もしも最大限並べることができたらという仮定の話しであり、現実にはハロゲン化銀分子が多数集まってクラスターを形成し、それがランダムに配置していて感光素子としての単位になっているはずです。またフイルム感度(ISO)によっても、このクラスターの大きさや個数が異なるはずです。それにしても銀塩写真の画素数は1000万(1 x 107)画素相当程度と言われている計算方法や根拠をぜひ知りたいものです。







 撮影済みカラーネガフィルムの顕微鏡写真
やはり粒子が見えて少しデジタル的。
以下の全ての顕微鏡写真の倍率は同じ。
 印画紙にプリントしたカラー写真の顕微鏡写真
細かいが粒子が見える

 カラースライドの顕微鏡写真  今回の原稿作成用にデジタルカメラの撮像素子を取り出すために敢えて分解することにした1200万画素のコンパクトデジタルカメラ

超小型のプラスドライバーで44本のネジを取り外してやっと分解できた内部の様子

こんなに高密度に部品がたくさん入っているとは予想していなかった。もはや再起不能! 

この中心部が欲しかったデジタルカメラ
の撮像素子

照明の関係で緑色に光っている中央の部分がそれで約5mmx7mmのサイズ

撮像素子の顕微鏡写真

各画素は小さ過ぎてよく見えずアナログ的であった。 

高解像度デジタル写真データをインクジェットプリンターで光沢紙にプリントした画像の顕微鏡写真

2500万画素程度の35mmフルサイズの撮像素子の一眼レフデジタルカメラで撮影したにもかかわらず(以下同様)、これを見ると明らかにデジタル状の写真である。


  デジタルカメラで撮影した写真は、液晶モニターで見たりプリンターでプリントして見ないと画像として確認できません。しかし、いくら高解像度のデジタルカメラで撮影しようと、普通の液晶モニターの解像度は100dpi(dots per inch)以下であり、インクジェットプリンターのそれは数百dpi程度なので、これらの値以上の解像度を表示することは不可能なのです。このことがデジタル写真では非常に重要なことです。ただし、家族写真などを気楽に楽しむ程度なら、これで何も問題ないと思います。参考までに、作図ソフトで、黄色い背景に6pの太さの斜めの黒い直線を描いて、比較観察してみました。その結果、ノートパソコンの液晶モニター上でよく見ると、肉眼でもジャギー(階段状のギザギザ)が、はっきり確認できます。その画面の一部をマクロレンズで普通に接写した画像やインクジェットプリンターに出力した画像の顕微鏡写真を以下に示します。これらの写真には現れておりませんが、デジタルカメラの撮像素子も液晶モニターも画素が規則正しく配列されていますので、相互に干渉して縞模様が出ることがあります。それを専門用語で『モアレ模様』と呼びます。パンストを2枚重ねてはいたり、レースのカーテンが折れ曲がって二重になっている部分などでよく見られる模様です。

 液晶モニター上に表示した斜めの直線を普通のカメラとマクロレンズで接写した画像で背景には全面に液晶セルがはっきりと写っている  同左の画像をインクジェットプリンターで出力し顕微鏡で観察した画像



アナログ音源とデジタル音源について

代表的なアナログ音源であるレコードのジャケットの一例

 これは1969年9月26日にイギリスで発売されたビートルズの実質的な最終アルバムで、ビートルズのアルバムで、最もよく売れた”ABBY ROAD”のオリジナルのイギリス盤であり、非常に有名で話題の豊富なもの。その後、日本で日本版も市販された。撮影場所は、録音スタジオのあるロンドンのAbby Roadの横断歩道で、左端から右へ順に、ビートルズのメンバーのジョージ、ポール、リンゴ、ジョンである。ポールはこの時点で、すでに交通事故で死んでいるが(実際には現在も存命中!)、ビートルズの人気に影響するのを避けるために、それを隠すためにポールのそっくりさんを起用したという説(かの有名な『ポール死亡説』)が出て、非常に話題になった。すなわち彼だけが裸足で右足を前に出しており、左利きにもかかわらず右手にタバコを持っていることから、この写真の人物はポールの替え玉なる説である。しかも写真の左奥に停車中の白っぽいフォルクスワーゲンのナンバープレートの番号が”28IF”であり(ジャケットの実物を見ると、はっきり読める)、これの意味するところは、『もしも彼が生きていたら28歳』になる(この時点では満27歳)ということと彼らの服装の色や種類から、ジョージは墓堀人、リンゴは葬儀屋、ジョンは神父に見立てたということであるが、それにしても余りにも話ができすぎている。

そのジャケットの裏面

 これは、その道路にある実際の塀を撮影したものであるが、撮影中に青い服の女性が撮影中であることを知らずにカメラマンの前を横切ったために、右端にその姿が少し写ってしまいカメラマンからすれば失敗作なので、この写真を採用しないつもりであったが、かえって面白いのでこれを採用しようとビートルズメンバーが言って採用になったというエピソードもある。


そのレコード本体(アップル・レコード社製のイギリス・オリジナル盤)

 全世界で約3000万枚も売れた超ベストセラーである。オリジナル盤のSide 2(裏面)のメドレー曲の最後に、隠しトラックとして”Her Majesty”が入っているが、ジャケットにもレコード面にもその曲名は記載されていないことも話題になっているなど実に興味深いレコードであり、オリジナル盤はコレクションとしても非常に価値が高い。

レコード盤の顕微鏡写真

 この溝の中の凹凸をレコード針でトレースして振動という物理的な完全なるアナログ信号を電気信号に変換し、増幅などして音楽として聞き楽しむことができる。まさにこれは典型的なアナログの世界である。

そのレコードの音をMCカートリッジで拾っている様子

 レコードは過去の音源だと思っている人が多いようですが、決してそうではなく、マニアの間では人気上昇中であり、超ド級のレコードプレイヤーも新たに次々と市販されており、肝心の音はCDよりも良いのです。その件に関しては、私のホームページ(http://hiroshi-t.com/light-and-sound.html)を参照して下さい。ただし、現在はレコードが入手しにくいことや操作が面倒などの欠点がありますが、それはそれでいいんです。

デジタル音源の一例としてのCD

 これは”STRADIVARIUS ON GOLD CD”というタイトルのもので、ピットの反射面が純金でできているという特別仕様の高級CDである。


  そのCDの音楽記録面(裏面)の顕微鏡写真
ピットは小さすぎてこの写真ではよくわからない

レーザー光線をCDに照射し、その反射の有無でデジタル信号を読み取る

中央の小さな丸い窪み部分がそのピックアップ部



写真の解像度に関係する要因のまとめ


 上の表の補足をします。光学顕微鏡では、光で物体を見ますので1μm(= 1x10-6m)くらいのサイズのバクテリア程度の大きさのものまでしか見ることができません。しかし、たとえばウイルスですと数十nm~数百nm(nmは10-9m)くらいの大きさで、光の波長よりも小さいので、光学顕微鏡では見ることができず、光の代わりに電子ビームを使う電子顕微鏡が必要になります。
 入力側の性能にも出力側の性能にも限界がありますので、組み合わせた場合には、それら全体の性能の中で最も低い結果しか得られません。すなわち、いくら高解像度のデジタルカメラで撮影しても、その結果をノートパソコンの液晶モニターで見るのであれば、液晶モニター以上の解像度は得られないということです。従って、むやみに非常に高解像度のデジタルカメラを使っても、データーのコピーを始めとする各種処理に時間がかかり、ハードディスクの容量もたくさん必要で、無駄なだけです。さらに以下のことにも注意して下さい。ただし、現在のテレビよりも高画質の4Kテレビが実用化され、インクジェットプリンター並みの解像度になり、さらに今後それ以上のモニターが開発されれば、現在のモニターよりもはるかに高密度になり、実用上何ら問題なくなるので、デジタルの将来は明るいと言えます。最初は高価格でしょうが、次第に価格は低下し、やがて広く普及するでしょう。デジタルの世界の今後がとても楽しみです。
 撮影した画像は、銀塩にしろデジタルにしろ、通常は最終的には以下に示す(1)から(4)のいずれかの方法で肉眼で見ることになりますが、非常に低クオリティで話しにならない(3)を除き肉眼では、その差の判別がつかないかもわかりませんが、顕微鏡レベルで判定すれば明らかに、クオリティの高い順に(2)、(1)、(4)、(3)となります。デジタル写真の場合、いくら撮像素子の解像度が高くなろうとも、そのデーターを出力するインクジェットプリンターの解像度が高くないために、折角の高解像度のデーターを活かせておりません。やはり写真のクオリティでは、スライドフイルムが最高です。私は、以前にはHASSELBLADやMamiya RB67 Pro Sなどのカメラに6x6cmや6x7cmフォーマット用のスライドフイルム(俗に言う『ブロニー判』)を入れて、よく撮影しておりましたが、特に低感度(ISO値の小さいもの)のフイルムを使うと粒子が細かくて、これ以上のハイクオリティの写真は存在しないと思います。しかし、とても残念なことに、カラースライド用フイルムの需要は、デジタルカメラの普及と共に激減し、ついに各社とも製造中止に至り、製造元の在庫はゼロだそうです。今や販売店にわずかに残っているのみであり、カセットテープやビデオテープなどと同様に、市販品はもうすぐに地球上から消滅する運命にあります。ポジカラーフイルムに続いて、ネガカラーフイルムも同様の運命を辿ることは確実でしょう。
 デジタル写真は、元のデジタルデータがいくら高解像度であっても、インクジェットプリンターで出力する限り、元のような高解像度は望めません!


(1) ネガフイルムで撮影 → 印画紙にプリントして見る
(2) ポジフイルム(スライド用)で撮影
               → ビュワーやプロジェクターで投影して見る。
                さらにはそのまま本などの印刷原稿にする。
(3) デジカメの撮像素子で撮影 → 液晶モニターで見る
(4) デジカメの撮像素子で撮影
         → インクジェットプリンターで写真用紙にプリントして見る


写真としてのクオリティが最高であったカラーリバーサルの実例

上段が35mm判、下段は6x6cm判で、アメリカに住んでいた時に
コダック社で現像してもらったもの。


 上記の6x6cm判のカラースライドの写真を撮影したプロ用の中判カメラのHASSELBLAD。カメラボディはスウェーデン製でレンズはドイツのZEISS社製であり、写りは非常に素晴らしい。最近は、このカメラのデジタル版が市販されており、その中のフラッグシップモデルは、40.2 x 53.7mmのフォーマットで6010万画素という超高スペックで、デジタルカメラでは世界最高であるが、一式で400万円以上もするとても高価なものある。(注:これはシステムカメラであり、組み合わせによって値段は変わる。)

 以上全体の結論としては、完璧にアナログという写真は存在せず、顕微鏡的レベルで見れば全てデジタル写真です。肉眼で見るだけであれば、肉眼の分解能を超える高解像度の写真であればアナログ的に見えるということです。従って、そのレベルで言えば、逆にデジタル写真でもアナログ写真となります。
 なので、写真の分類として、『アナログ写真』と『デジタル写真』という呼び方の区別は正しくないという面があるわけです。その問題をクリアするためには、『銀塩写真』と『電子写真』などとするのがよいでしょう。
 それにしてもデジタル写真の簡便さは最高であり、普通に肉眼で見る限り解像度に特に問題はなく、今やフイルムカメラを使う気は全くしません。もう少ししたら、たとえフイルムを使いたくても製造中止で入手できなくなり、過去の遺産となることでしょう。フイルムには有効期限があり、長期間の保存はできませんので、フイルムを使いたいのであれば今のうちしかできません!


以上の原稿の構想は、2013年の12月下旬にニューヨークのアパートに滞在中に突然頭に浮かび、そこでハロゲン化銀分子の個数の計算をしたり原稿本文の骨子を書いて、翌年の1月上旬に帰国してから原稿に挿入する写真の撮影などして、最終的な文章を完成させたものです。