皆既月食の写真
2014年10月8日(水)の夕方から皆既月食の写真を撮影しようと撮影機材を整えて、いざ撮影開始となりましたが、残念なことに満月のある東の空の下の方には雲が広がっており、その隙間から満月が時々断片的に見える程度でしたので、月食の最初の部分の写真はありません。幸いにも雲は下の方だけでしたので、月が昇り雲の上に出ると、以後は常に月全体がよく見えて撮影には問題ありませんでした。しかし、残念ながら真冬の特別に空気が澄んでいる時以外は無理ですが、地球から月までの間に存在するモヤや空気のゆらぎなどの不可避的要因のために、シャープさにおいて完璧な写真にはなっておりません。
月を撮影する場合のご参考までに述べますと、原版が36mm x 24mmの35mmフルサイズのカメラで撮影すると、レンズの焦点距離の約1/100のサイズに月は原版に写ります。今回の撮影に使用した800mmの焦点距離のレンズで撮影した写真では、その原版で実測したところ、月の直径は確かに1/100の約8mmに写っております。36mm
x 24mmの画面一杯の大きさになるように月を写そうとすると、レンズの焦点距離は2400mmにもなり、こんなものすごい超望遠レンズは市販されておりませんし、あったとしても何千万円は確実でしょう。しかし、ちょっと良い天体望遠鏡で撮影すれば、画面一杯に月を撮影するのは容易ですが面倒ですし、アップ過ぎる写真になり、皆既月食の写真には向きません。
皆既日食ですと、太陽が完全に月の陰に隠れて、真っ黒になってしまいますが、皆既月食では満月の全体像が薄暗い赤色になって見えます。なぜ赤く見えるかですが、波長の長い赤い色の光は、途中に存在する空気などによって少し曲がる性質があり、地球の周囲から赤い光が回り込んで月に到達するので、月全体が暗赤色の血のような色に見えるので、英語ではこれを
“Blood Moon” と呼びます。ちなみに “Luna Rossa” (イタリア語で『赤い月』)というタイトルのカンツォーネがあります。“Blood
Moon” は、大地震の前兆であるとの言い伝えが古くからあります。これは迷信でしょうが、最近は想定外の大きな自然災害が多発しており、注意するに越したことはありません。
今回の “Blood Moon” の上部が少し明るく見えますが、それは太陽→地球→月のそれぞれの中心点を結ぶ線が今回は完全な一直線にはならずに、地球の位置がごくわずかに下にずれており、地球の上部からわずかに漏れて来る太陽光が月の上部に届いているためです。
天候や仕事の都合などで、今回の皆既月食を見ることができなくて残念な思いをした人も心配いりません。来年の4月4日(土)の夜9時頃に、東の空の「おとめ座」と「からす座」の間の少し上に皆既月食が見えるはずです。土曜日ですし、来年ぜひ見てください。彗星ですと生きている間に再度見ることが不可能なくらい長年月後になり、翌年にもう一度同じものが見れるような例は、なかなかありせん。たとえば、知名度の高いハレー彗星なら、約76年ごとに1回しか見ることができません。
天体の趣味は、対象のスケールが非常に大きく、気も大きくなるので、気分転換・ストレス解消・健康増進に良いと思います。例えば、最も遠い天体までの距離は、百億光年のオーダーという想像を絶するほど長いものでのす。書類提出の締切日まであと二日しかないとイライラしながら徹夜で仕事に励んでいるような、ちまちました生活を毎日送っている現代人の私たちは、時々月や星を眺めて、気分転換をしてリフレッシュしましょう!