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カメラと写真について

写真で重要なこと

デジタルカメラの画素数について

 最近、デジタルカメラの画素数ばかりが重視されているようですので、参考までに少し補足しておきます。現在市販されているデジタルカメラに採用されている撮像素子の主なものの相対的なサイズの比較の図を右に示します。これを見ると、サイズに大きな差があることがよくわかると思います。
 撮像素子を構成する構成画素1個ずつのサイズが大きいほど、画質面で有利になります。そのサイズが大きいほど、微妙な明度の差や色相の差をうまく表現できるからです。一方、画素数が多いほど、画像全体の情報量が増大し、画質の向上につながります。したがって、撮像素子のサイズを上げずに画素数だけを増大させるのは多少問題があります。やはり、とにかく少しでも高画質をと望むのであれば、撮像素子のサイズも画素数も、両方とも大きいほどよいとなります。しかし、そうなると大きい、重い、高価という三重苦に耐えねばなりませんし、持ち運びが不便で、シャッターチャンスを逃すこともあり、これらは弱点と言えます。
 さらに重要なことは、より高画質を望むのであれば、撮像素子のサイズや画素数だけではなく、レンズ自体の性能も非常に重要なのは言うまでもありません。単に記録写真の撮影だけなら問題ありませんが、味のある芸術写真を撮影し、A3ノビとかの大きなサイズにプリントして展示するような場合には、レンズの性能は非常に重要です。実際に撮影して画質を比べてみれば、レンズ性能の差はすぐにわかります。たとえばキヤノンのレンズですと、Lシリーズの高級レンズなどがお勧めです。このは、Luxuryの略です。


写真・カメラ紹介

 以下に愛用のカメラ・レンズの一部を紹介し、さらにそれで撮影した写真の実例も併せて紹介します。特に大口径レンズのボケ味にご注目下さい。ここにお示しするものは、普通では、ほとんど見かけない、非常にマニアックな機材ばかりかと思います。こんなのがあるんだという参考にもして下さい。このような写真を撮影しておられる方や興味をお持ちの方、ぜひ情報交換しましょう。

以下の3枚のは、上のカメラで撮影した写真です。 撮影場所:奈良公園 (クリックで拡大)




これは世界一明るい(F値世界最小)レンズです!

下の写真は、左のカメラで、絞り開放で撮影したものです。アムステルダムで買ってきた中央の陶人形の眼にピントを合わせて撮影しました。(クリックで拡大)



下の写真は、左のカメラで、絞り開放で撮影したものです。アムステルダムで買ってきた中央の陶人形の眼にピントを合わせて撮影しました。(クリックで拡大)




このレンズのF値は1.0で、一眼レフ用としては世界一明るいものです。

 左下の写真は、プリンスエドワード島で買ってきた『赤毛のアンの人形』を、目にピントを合わせて、上のカメラで絞り開放で撮影したものです。背景が何か分からないくらいに、とろけるようにボケています。このようなボケ味は、撮像素子のサイズが大きいほど有利ですので、35mmフルサイズのカメラがベストです。コンパクトデジカメでは、レンズがあまり明るくない こともあり、ダブルでこのような写真を制作するのは無理です。

 右上の写真は、Canon EOS 5D Mark UとCanon Zoom Lens EF 24-105mm, F4でF8.0にセットして、上の写真と同じ被写体を撮影したものです。絞りによって、こんなにも写り方が違います。これだと背景のイタリア製ゴブラン織りの細部まで明瞭に分かりますが、主題の人形の存在感が薄れます。よって、写真の目的が何かによって、レンズ(絞り)を選択しないといけません。


キヤノンの50mm標準レンズの比較

 キヤノンのレンズ製造技術の高さを誇示すべく、その限界に挑戦した35mm一眼レフ用の超弩級標準レンズとして世界一明るいEF 50mm F1.0L USMが1989年に発売されました。現在でもこの記録は破られておりません。とにかくキヤノンは、非常に明るいレンズを作るのが得意(好き)なメーカーです。このレンズの前玉は、標準レンズとしては口径が最大で6cmくらいあり、当時では製造が非常に困難であった非球面レンズを2枚、高屈折率レンズを4枚、多層膜コーティングなどを採用していて、製造に非常に手間暇かかるレンズで、当時37万円くらいだったと思いますが、作るのがこんな厄介なレンズはやっておれないとのことで、800本くらい製造しただけで、間もなく止めてしまったようです。そのために超貴重な幻のレンズとなり、大阪の有名なカメラ店で聞いたところ、中古市場にもなかなか出ないらしく、たまに出ても45万円くらいするそうです。質量は1kgもあり、持つとずっしりと重さを感じます。このレンズは、世界のレンズの歴史に残るものであるのは確実です。
 それに反して、キヤノンの35mm一眼レフ用の標準レンズの中で最も手軽なものとして、EF50mm F1.8 ?Uがあります。これの定価は12,000円と買いやすいもので、質量はわずか170gくらいです。両レンズを比較のために並べて撮影した写真を次に示します。

 キヤノンの標準レンズ:
EF 50mm F1.0L USM(左)とEF50mm F1.8 ?U(右)
キヤノンの標準レンズ:
EF 50mm F1.0L USM(左)とEF50mm F1.8 ?U(右) 

 次にEF50mm F1.8 ?Uのレンズの絞り開放で撮影した写真の例を次に示します。上記のEF 50mm F1.0L で撮影した写真と比較してみて下さい。特に背景のボケ具合を。このレンズでは、背景をこれ以上ぼかすことはできません。



 EF50mm F1.0L USMで絞りを開放にして撮影したのが以下の2枚の写真です。全体の柔らかい雰囲気とアウトフォーカス部の独特のボケ味をご覧下さい。このような味の写真は、このレンズでないと撮影できません。いずれも三重大学の学長室で撮影しました。

三重大学学長 内田淳正先生   三重大学理事・副学長 朴 恵淑先生
(人間国宝・加藤孝造作 志野茶碗を手に)



 下の写真は、左のカメラで、絞り開放で撮影したもの。背景が溶けるようにボケて、主題のチューリップの花が浮き上がり平面なのに立体感が出て、ファンタジックな雰囲気がするので見ていると癒しになり、ひいてはストレスの低減 → 健康増進に寄与することでしょう。(クリックで拡大)


 一般にポートレート撮影では、人物の顔、特に目にピントがシャープにカチッと合っていて、背景は良い雰囲気にふんわりとボケて、人物が浮き出るように見えることが望まれますので、少しだけ望遠気味でF1.2とかの非常に明るいレンズを使います。そのようなレンズは、口径がかなり大きいので重いです。以下にそのような2種類のカメラ・レンズを使って撮影した実例を示しますので、ご覧下さい。今回のモデルは、絵(写真)になるお顔で、『ひげ』の学長として皆に親しまれている三重大学学長の内田淳正先生(うちだ・あつまさ:前三重大学附属病院長・整形外科教授)にお願いして、学長室で撮影させていただきました。トレードマークの『ひげ』と、きりりと引き締まったお顔に、かすかに微笑みが浮かび、熟年学術派モデルとして最高です。







 以上の2枚は、大口径レンズの絞り開放で撮影しましたので、背景がふんわりとボケて、学長さんが浮き出て、良い雰囲気に写っていると思います。








 以上の2枚は、絞り5.6で撮影しましたので、背景の本などがかなりクリアに写っております。ご覧のようにLEICA M8(デジタルカメラ)は、CANONに比べると、やや暖色系に写る傾向があります。


3D(立体)写真

奈良・平城宮跡で大極殿の3D写真 (6x6cm) を撮影しているところ(クリックで拡大)

左右の眼の幅の長さの移動ができるフォーカシングレールに乗せた
Hasselblad 500C/M with Zeiss 80mm, F2.8で、左右の眼で見るのと同じ映像を撮影する。





 地上の全てのものが、分厚い雪で覆われた極寒のフィンランドでカメラをカイロで暖めながらオーロラの写真を撮影している筆者  その時に撮影したオーロラの写真


 ワシントンDCの桜(春) タヒチ・ボラボラ島(夏) 


 カナダ・メープル街道(秋) フィンランドのトナカイそり(冬) 

以前使っていたカメラの紹介

ずっと以前には次のようなカメラなども使っていました。

 Leica ?Vf with Elmar f=3.5cm, F3.5  Nikon SP with NIKKOR‐P
f=10.5cm, F2.5

ヌメっとした軟体動物のようなデザインで個性のない現在のデジタルカメラよりも、個性的でメカっぽく、いかにも精密機器という感じが好きです。


デジタル一眼レフカメラのデザインの問題点と改善の兆し

 フイルムカメラの時代には、ハーフサイズから35mm、6x6cm、6x9cmなど、実に多種多様なカメラを使っておりました。35mm一眼レフとしては、ニコンのFシリーズも何機種か愛用しておりましたが、その中で最も多く使用したのではないかと思うのが下に示すF3です。このカメラは、イタリアの有名な工業デザイナーのジウジアーロ (Giorgetto Giugiaro) がデザインしたものであり、さすがにデザインの素晴らしさは言うに及ばず、使い心地も良くて非常に気に入り、世界各地へ連れて行きました。使い過ぎてペンタプリズムの角などにブラッシング(brassing:ペイントがはげて中の真鍮(brass)が見えていること)が何か所かに見られようになり、貫禄が出ておりましたが、デジタル時代になってからは、特別の理由があって一眼レフは完全にキヤノンに切り替えて、今やキヤノンを何機種も使用しております。その中で気楽に最もよく使っているカメラはEOS 5D Mark IIですが、このカメラは、そこそこ上等のクラスなのに、モードセレクターダイヤルの出来ばえは最低で、とても安っぽいです。もっとも、ライカと異なり、持つ喜びなんか無くても、このカメラは実用性だけでよく、仕事用と割り切って考えていますので、これは大した問題ではありませんが。一般にキヤノンは、性能重視・デザイン軽視の傾向があるように思います。美的センスのある社員がいないのかな。スペックもデザインも重要ですよ!
 現在の35mmデジタル一眼レフのデザインは、各社とも丸々してヌメっとしており、キリリと引き締まった感じが全く無く、メタボ的でボケたデザインが好きになれません。車とか新幹線の車両などであれば流線型にして、少しでも空気抵抗を減らすという実用上必須なことがありますが、なぜカメラを流線型にしないといけないのか私には全く理解できません。しかもどのメーカーのものも脱個性的で画一的なスタイルでユニークさがなくて面白くありません。そう思っていたら何とニコンから、ついに私が期待していたフイルム時代のような素晴らしいデザインのメカメカした35mmデジタル一眼レフカメラが2013年11月末から新発売になりました。シャッターの切り心地もよく、このカメラは性能とデザインともにいけると思います。これは確かに昔のニコンFMによく似ていますが、今度のデジタルカメラの型番はDfで、その写真を下に示します。価格はオープンですが、ボディのみの実売価格は27万円台です。上記のキヤノンの安っぽいダイヤルとは異なり、Dfには手間のかかる金属を削り出した精緻なローレット加工を施した素晴らしいダイヤルがたくさん付いていて、操作すべきことが一目瞭然・単刀直入で、使いやすいものです。昔からカメラをやっている人でデジタルに弱い人たちに特にこれは受けそうに思えます。ちなみにDfとは、デジタルカメラでアナログとfusionしたものという意味だそうです。今後、他社からも軟体動物のような現在のデザインではなく、以前のフイルムカメラのようなシャープで引き締まったデザインのデジタル一眼レフカメラが発売されそうな予感がしますが、各社独自のユニークさやオリジナリティをぜひ出してほしいものです。

以前に最も多用していたNikon F3
(ブラックモデルのみ)
  新発売のデジタルカメラNikon Df
(ブラックモデルもある)

特殊撮影

?@ 超接写マクロ撮影

等倍〜5倍マクロフォト撮影が可能なキヤノンの超接写システムを次に示します。これを使えば、35mmサイズの画面に等倍から5倍までの任意の拡大率での超接写が容易にできます。これは、被写体に均等に光が当たって陰ができないリングストロボを特殊マクロレンズの前部に装着して、オート露光が可能です。

   

Canon MP-E65mm F2.8 1-5X Macrophoto レンズと無影撮影用マクロリングライト


このシステムを使って、黒い紙の上に五円玉を置いて等倍で撮影した写真を右に示します。等倍では五円玉がちょうど35mmの画面の上下いっぱいに写ります。このレンズでは、これより小さくは写せません。 

このシステムを使って、五円玉を最大拡大倍率の5倍で撮影した写真を右に示します。このシステムを使うと、非常に鮮明な超接写が容易にできます。 

下の写真は、一万円札の一部分を5倍拡大で超接写したものです。紙の繊維やケバまではっきりと写っています。さて、これは一万円札のどの部分かりますか? 少し難しいかも!


?A 魚眼レンズ撮影

焦点距離8mmの全円周魚眼レンズは、長方形の画面に円形の画像として180度の画角のものがすっぽりと納まって写ります。空に向けて撮影すると全天空が写るために、元々は雲量を測定するために気象の分野で使われたもののようです。一般には超超広角の画角を活用した非現実的な面白い写真を撮影して楽しむのに使われています。よく見かけるのは、犬や猫の顔の超アップの写真で、鼻が異様に大きく写るユーモラスなデフォルメ写真になります。そのような写真を撮影する時は、レンズ前面と鼻との距離は数センチメートル以内とかの非常に近い距離ですので、レンズの前面に鼻が接触してレンズを汚さないようにする注意が必要です。さらに、正面の景色を撮影しようとする時に、カメラを少し下向き加減に撮影するだけで撮影者自身の足が写るほど超広角ですので、それにも注意が必要となります。いずれにしろ非日常の写真が撮影できて面白いものです。またその他に、超超広角の画角を活用する撮影例として、全天空を覆うようなスケールの大きなオーロラを撮影する時などにも魚眼レンズは使われています。

魚眼レンズを装着したカメラ(Canon EOS 5D)を次に示します。


 魚眼レンズで人の顔を超アップで撮影した例を右に示します。このレンズでは、床から天井まで写ります。これは、鼻先とレンズの前面との距離は3cmくらいで撮影しましたのでデフォルメが激しく、たとえ親友でも誰かわからないほどの顔に写っています。被写界深度が非常に深いので、そんなに近くてもピントが合うのは驚きです。 
 次に猫の顔を魚眼超接写した写真を示します。三重大学の正門付近によくいる非常に人懐っこいメスの『ミー子』です。


?B ファイバースコープカメラ(内視鏡)撮影

 ここに示すものは、定評のあるオリンパス社製のものです。普通のカメラではアプローチできないような部分の撮影ができます。この種のカメラは、胃カメラなどのような医療分野の他に、ジェットエンジンの内部の点検をはじめ、工業分野などでも幅広く活用されています。ファイバースコープの先端部からは、光ファイバーで導かれたLEDランプの光が照射されますので、たとえ暗い部分でも明るく写ります。手元側にあるコントローラーの操作で、ファイバースコープ先端部の角度などを変えることができます。


ファイバースコープカメラ一式セット

そのファイバーの先端部分(直径 約1cm)
  先端上部に黒く見えている窓から映像がカメラに
送られる。先端下部に白く見えている2つの丸はLEDライトからの照明用の光。

 このシステムを使った実写の一例として、ファイバースコープに接続してあるカメラのファインダーを覗きながら自分の口の奥にファイバースコープの先を突っ込んで撮影した写真を次に示します。一人で、この操作のすべてをやるのは、やや大変です。特に『口蓋垂』(俗に言う『のどち○こ』、英語では uvula )の写真を撮影する場合は、舌が邪魔になりますし、下手をすると吐き気がしたり、さらには『口蓋垂』がぶらぶら動いたり、上部の粘膜にへばり付いて隠れてしまったりしますので、自分自身で撮影するには、非常に写しにくい被写体です。写真撮影の趣味も、ここまでくると普通ではありませんねー!!

自分自身で撮影した『口蓋垂(のどち○こ)』の写真



?C 実体顕微鏡写真の撮影

 数mmくらいの大きさの物体を35mm判の画面いっぱいに拡大して撮影するのに適したシステムの実例が以下のようです。このようなシステムでは、カメラの接写レンズで撮影する通常の接写拡大写真(等倍から数倍以内)と本格的な顕微鏡写真(およそ百倍から1500倍以内)の間の領域の写真が撮影できます。普段普通に肉眼で見ているのとは少し異なった新たな世界が広がり、面白いものです。子供の夏休みの自由研究などで、虫の触覚やトンボの翅などの拡大写真を撮影して、生物の不思議・ミクロの世界をよく観察してはどうでしょうか。きっと勉強になるはずです。筆者は、子供の時からそのようなことをするのがとても好きでした。

実体顕微鏡に35mmフルサイズのデジタルカメラを装着した実体顕微鏡写真撮影システム
顕微鏡の接眼と対物のレンズを選択することによって幅広い拡大倍率の写真を撮影できる


その実例として、このシステムで五円玉の『五円』の文字の部分を撮影した結果を、以下に示します。すべて原版のままで、トリミングは一切しておりません。照明の仕方(照度や角度など)で、かなり雰囲気が異なって写ります。


 この倍率ではキズは目立たない  以下、表面がキズだらけなのがよくわかる


 普段はじっくりと見ることも無く気にもしない市販のCDやDVDのソフトの最内周(センターホールのすぐ外側)の部分に、謎のカラーコードが入っており、カラフルできれいなので、実体顕微鏡で撮影してみました。下記の実例では二重になっておりますが、一重のものが多いようです。照明の仕方(角度)で、色合いはかなり異なって見えます。この部分を黒いマジックインキで塗りつぶして再生してみましたが、音声や映像の記録されているビット領域の外ということで、やはり音声や映像に全く異常ありませんでした。これは商品管理コードではないかと思いますが、音楽を聞いたり映像を見たりするには、直接の関係はありませんので具体的に何なのかは調べておりませんが、実体顕微鏡の被写体としては面白い部分です。よく見るとこの付近には、訳のわからない数字や記号なども書いてありますが、それらが何であるかは、同様にどうでもよいことです。

ドイツ・グラモフォン製のウィーン・フィルの2004年ニューイヤー・コンサートのDVDの最内周の実体顕微鏡写真 

 その部分を通常のカメラで接写した写真
(実体顕微鏡のステージの上で上記の実体顕微鏡写真を撮影する時に撮影:照明の仕方(角度)で、このようにとても美しく光る)


USBデジタル顕微鏡

 パソコンにUSBケーブルで直接接続して観察できる、かなり小型で高性能な顕微鏡が市販されており、とても便利なものなので紹介しておきます。専用ソフトを立ち上げて簡単に顕微鏡観察ができ、その結果はパソコンのモニターに表示されます。さらに液晶プロジェクターを接続すれば、大きな画面にその顕微鏡画像を投影できますので、学校での理科教育などに活用するのもよいでしょう。
 その実例を以下に示します。

左:USB顕微鏡本体(倍率:20〜500倍ズーム、明るさ可変のLED照明内蔵)
右:5円玉の穴のすぐ下方にある『五円』という文字の『五』を最低倍率で観察中の様子
  最低倍率でも、ほぼ画面いっぱいの大きさの非常に鮮明な画像が得られ、これを保存し
  たり色々と加工することもできる。


 本屋で、たまたまこれを見つけ、面白そうなので買ってきて、色々とトライしてみたところ、子供の教育上も素晴らしい商品だと思いましたので、ここに紹介します。これは、小学館の学習ムックシリーズの一つで、『ふろくとまんがで「ふしぎ?」がわかる知的おもしろ科学本』とサブタイトルが書いてあります。次に示す写真のように、子供が喜びそうなかわいいデザインのドラえもん顕微鏡に67ページのフルカラーで読みやすい漫画チックな解説書が付いて、楽しく科学の勉強ができ、定価は1890円と非常にお値打ちです。これは小さな子供から名誉教授(自分だけかも?!)まで楽しめる科学玩具なのです。

 セットの外観と顕微鏡   解説本の内容



スマホでウスバカゲロウの顕微鏡写真を撮影しているところ
(この撮影結果は下に示してある)

 付録の『けんびきょう』は、約40倍のLED照明付きの実体顕微鏡で、長さが約11cmと小型なのでポケットやハンドバッグなどに入れてどこへでも持ち歩くことができ、照明内蔵でとても鮮明に見えます。さらに、今や誰でも持っているほど普及したスマホや携帯のカメラのレンズ部分をこの顕微鏡の接眼レンズの上に持っていき、手持ちでモニタ画面を見ながらベストポジションでシャッターを切れば顕微鏡写真を撮影することも簡単にできますが、見たままを写真として記録できるのも素晴らしい点です。この場合、普通のデジカメよりもスマホや携帯のカメラのほうがうまく写るようです。その実際の撮影風景を次に示します。
 赤い部分は ピント調節ダイヤルで、左側面上部にはLED照明ランプのスイッチがあります。 



 普段は肉眼で見ることのできないミクロの世界の探検は非常に楽しく勉強になります。特に生物の微細構造はすごいですし、生命の神秘に驚かされます。植物でも動物でも、顕微鏡で拡大して見ると、細かい毛のようなものが生えていることが多いのに気付きます。その実例を以下に示しますが、肉眼では、もっとはるかに鮮明に見えます。

 猫じゃらし(エノコログサ)の種子  よく見る雑草のオヒシバの種子
(こんなに毛だらけとは)

アブラゼミの翅   ウスバカゲロウの翅

 蚊の死骸


顕微鏡写真

 自宅で趣味でやっている顕微鏡写真撮影システムは、次のようなものです。

 このシステムで、自宅にある身近なサンプルの結晶を撮影した実例を次に示します。筆者は、元々はビタミンの研究者なので、自宅にもビタミンCやビタミンB3(ニコチン酸)などの純品の結晶があります。

ビタミンCの結晶
(無色透明です。決して黄色ではありません!)
ビタミンB3(ニコチン酸)の微細な結晶
(偏光をかけて撮影)

 化学調味料:グルタミン酸ソーダの結晶 
(偏光をかけて撮影)
食卓塩の結晶 

 ずっしりと重いMade in Austriaのアンティーク顕微鏡を参考までに次に示します。レンズに少し汚れがあるものの、今でも立派に使えますが、部屋の飾りにしております。この顕微鏡のメーカーはC. REICHERT WIENで、その筋では結構有名であり、この会社のアンティーク顕微鏡は中古市場で結構な値段がしているようです。




ロバート・フックの顕微鏡観察と”Cell”(細胞)の発見

 ロバート・フック(Robert Hooke: 1635.7.18〜1703.3.3)は、イギリスの多才な科学者であり、顕微鏡の分野では1665年に顕微鏡と望遠鏡で見た観察図譜の”MICROGRAPHIA”を出版したことでも知られています。その原本のタイトルページを次に示します。この本に記載されておりますが、コルクを顕微鏡観察した結果、細胞を発見し、それを”cell”と命名したことで有名です。


Robert Hooke著”MICROGRAPHIA”(1665年刊)のタイトルページ

 この本の中で顕微鏡観察図譜としてはコルク、ノミ、シラミ、ハエ、ブヨなど多数、望遠鏡観察図譜としては月、土星、プレアデス星団などが記載されています。この本のタイトルの日本語訳は、『顕微鏡図譜』と書いてありますが、望遠鏡観察の結果も記載されております。フックのスケッチは、まるで写真のように非常に詳細にリアルにうまく描かれています。この中で特に注目すべき点は、コルクの切片を観察した結果についての記載で、小部屋状のものが全面にあることを見つけ、それを小部屋という意味の”cell”と命名したことです。”cell”は、日本語では『細胞』と呼んでおり、生体構造の基本単位となっているものです。フックが観察したコルクの細胞は、乾燥した死骸であり、”live cell”ではないので細胞内の核やミトコンドリアなどの微細構造は見えず、細胞の輪郭である細胞壁のみを見ていたのです。
 フックが使用した顕微鏡は、ロンドンのクリストファー・ホワイトが製作したものですが、”MICROGRAPHIA”に掲載されているその顕微鏡の画像とフックがスケッチした有名なコルクの顕微鏡観察図を原本に記載のまま次に示します。








 フックが使用した顕微鏡の図  フックがスケッチしたコルクの顕微鏡観察図

その顕微鏡の復刻品で筆者所有のものを次に示します。左側は古典的な照明装置です。


 筆者が自宅で撮影したコルクの顕微鏡写真を次に示します。自宅にはミクロトームのような標本の超薄切片を作製する装置がなく、以前に抜いたワインのコルク栓を、カミソリの刃でできる限り薄くカットしようとしましたが、コルクはカサカサでもろく、顕微鏡観察に適した非常に薄い切片を作製するのは不可能に近く、顕微鏡観察になんとか使える標本は、なかなかできなくて苦労しました。しかし顕微鏡写真の撮影は、デジタル写真ですので、1秒以下の瞬時にして完了しますが、上記のフックのスケッチなら、かなりの時間がかかっているでしょうし、眼が疲れてやっておれないと思います。学生時代に顕微鏡実習でスケッチをした時の苦労を思い出しました。

コルクの顕微鏡写真(筆者撮影)


 最後に、フックの顕微鏡観察スケッチの超絶技巧の一例を示します。これはハエの図ですが、拡大してよくご覧下さい。驚異的な精密さに圧倒されと思います。”MICROGRAPHIA”に掲載されている他のすべてのスケッチも同様にすごいです。とにかく340年くらいも前の時代の顕微鏡観察図とは思えません。




超高性能な現代の光学顕微鏡

 世界最初の光学顕微鏡は、オランダの眼鏡製造者のヤンセン父子が1590年に作ったものとされている説が有力ですが、その後420年以上も経過した現代においては、改良が重ねられて、超高性能な光学顕微鏡が市販されています。その一例が下に示すものであり、本体の外観はまるでスーツケースのようで、とても顕微鏡とは思えないスタイルをしています。これは完全にコンピュータ化されており、対物レンズの選択・交換やピント合わせを始めとする全ての操作は、専用のコンピュータ(この顕微鏡デスクの下にあり写真には写っていない)のソフトで操作するようになっています。これは大学での研究用に導入したもので、本体のみならず画像処理ソフトも高価であり、それらを組み合わせると1千万円以上もする非常に高額なオールインワン蛍光顕微鏡ですが超高性能で素晴らしいものです。今回一緒に撮影した上述の子供用のおもちゃの青い『ドラえもん顕微鏡』(1800円)との大きさや価格などの比較が面白いと思います。
 試料室の扉を開いた写真を、その右側に示します。これを見れば、ステージや倒立した対物レンズなどがあり、やっと顕微鏡だとわかるかと思います。


 この顕微鏡を使って、この原稿のデモ用に撮影した夏の小動物の体の一部の写真を次に示します。大学での私の研究では、このようなものを観察することはありません。


体長5mmくらいの小型のハエの翅   アブラゼミの足の先

 ロバート・フックのコルクの切片の顕微鏡観察で細胞を発見したのにちなんで、ここでも上記と同じワインのコルク栓の超薄切片を作り、その細胞を上記の最新の超高性能蛍光顕微鏡で撮影した写真を次に示します。この写真は、コルクに含まれているリグニンの自家蛍光を蛍光顕微鏡モードで撮影したものであり、染色はしておりません。



偏光レインボー・アート写真

 照明用ライトに第一次偏光をかけて、その光を無色透明のプラスチック製品などの被写体に透過させ、カメラのレンズの前面に偏光フィルターを装着して、第一次偏光を90度回転したその第二次偏光フィルターを通してその被写体を撮影すると、以下に示すような、とてもカラフルな色が付いた写真になり、非常に面白いと思います。筆者は、このような写真を古くから撮影して楽しんでいました。その撮影法の概要を次に示します。ちなみに、パソコン、テレビ、携帯などの液晶画面は偏光がかかっておりますので、映像や文字を消して白い画面にすれば、そのまま第一次偏光のライトボックスとして使用可能です。さらに偏光フィルターは、カメラ用品店で容易に入手できます。

この実際の撮影風景を次に示します。


 この方法で撮影した写真の実例を以下に何枚か示しますが、今回の被写体はすべて身近にある無色透明のプラスチック製品とセロファン紙です。なぜこのように不思議で美しいカラフルな模様が出るのかをごく簡単に説明しますと、このようなプラスチックには、それを形成している分子が、結晶状(クリスタロイド)に配列している部分と、非結晶状(アモルファス)の部分があり、そこに偏光が当たると、光の偏光、複屈折、干渉などの現象が生じ、それを第一次偏光フィルターに対して偏光面を90度回転した第二次偏光フィルターを通して見ると、被写体の無い部分の背景が真っ暗になり、プラスチック製品は以下に示すようなとてもカラフルなレインボー・カラーの不思議な模様が現れます。これは、プラスチック自体の不均一性や歪の状態を示しています。したがって、プラスチック板の希望の場所に自分の好きな模様や色を出して撮影するというような操作は全く不可能であり、すべてその材料の性状任せとなります。ちなみにガラスではこのような現象は全く起こりません。


   全く同じ被写体を、第二次偏光フィルターをかけずに下からのライトだけで撮影すると、このような色の付いていないごく普通の写真になります。


今回使用したカメラ用の偏光フィルターのケース  セロテープのホルダー 

プラスチック製の大根おろし器の上部  その大根おろし器の下側のおろし受け容器 

CDのケースの蓋側   同じCDのケースの身側

 プラスチック製のシャーレの身(左)と蓋(右)
(矢印の部分から溶けた原料を型に注入して成形したことがわかる)
 セロファン紙をぐちゃぐちゃに丸めたもの
(ビニールでは色はほとんど出ません)

 偏光フィルターは、上記のような使い方の他に、普通の風景の撮影にも、たまに使用されているようです。たとえば、木の葉の表面は光の乱反射によって白っぽい緑色に見えていますが、偏光フィルターを通せば、目の前で見ているような葉本来の鮮やかな緑色になりますし、空の青色は偏光フィルターを通せば、より濃い青色になります。ただし、これをしますと、全体が普段肉眼で見ているよりもはるかに鮮やかで濃い色合いになって、かなり不自然な色合いの写真になってしまいます。さらに、水面やショーウインドウのガラスの表面などが光の乱反射によって光って内部がよく見えないのを、その反射を消して内部がよく見えるようにすることなどにも偏光フィルターが利用されております。しかし、これも不自然な写真になってよくありません。たとえば実際に筆者がやった経験談を書きますが、伊勢神宮の内宮へ参拝に行って、五十鈴川の手洗い場で手を清めましたが、その付近には美しい大きな鯉がたくさんいて寄って来ますので、その写真を撮影しようとすると、水面の光の乱反射によって鯉がきれいに写りません。そこで偏光フィルターで水面の反射を完全に消して撮影したところ、確かに鯉は非常に鮮明に写ったのですが、まるで水のない川の底に置物の鯉が置いてあるように見えて、とても不自然な写真になりました。以上のように、通常の写真撮影には、偏光フィルターを使用することは避けた方がよいと思います。


『左巻き水晶』と『右巻き水晶』の偏光写真

 水晶は、身近なパワーストーンとしてよく知られておりますが、天然の水晶には『右巻き』と『左巻き』の2種類あるのをご存知ですか。下に示す写真では、周囲の物が表面に写り込んでいて、クラリティがよくわからないと思いますが、そのようなペアの、とてもクリアなハイグレード水晶で、専用台座付きの置物の写真を次に示します。写真の左側の銀色の台座に乗っているのが『左巻き水晶』で、右側の金色の台座に乗っているのは『右巻き水晶』ですが、水晶を肉眼でよく見ても両者の差は全くわかりません。

 水晶は、化学的には二酸化ケイ素(SiO2)でできている結晶であり、X線回折装置で結晶構造を調べた結果、右巻きのらせん構造のものと左巻きのものがあることがわかっています。これは、水晶の結晶の成長の過程での方向によって決まりますが、自然界での両者の水晶の存在比は、ほぼ半々のようです。
 上記のような2枚の偏光板を使う方法で、この2種類の水晶全体の偏光写真を撮影したところ、次に示すように、その結晶のらせん構造と同じ回転方向の渦巻き(エアリー・スパイラル)が見事に写り、今回とても感激しました。このようなパターンは、水晶玉をどの方向から見ても出るのではなくて、結晶軸の方向に向かって見た一方向の場合のみです。また、小さい水晶や傷ありの水晶を集めて熔かして大きな水晶を作製しなおした、いわゆる熔煉水晶(熔融水晶)やガラス玉では、このような渦巻き模様は出ません。
 このようなパターンが現れるのは、第一次偏光板を通過した偏光が水晶玉の結晶中で複屈折や偏光面が回転するようになり、この過程で波長ごとに光の進む速度が変化して第二次偏光板を通過して干渉縞を生じ、虹色のらせんとなって現れるからです。これは、結晶構成成分がきれいならせん構造を形成していないと見ることはできません。

上記の『左巻き水晶』全体の接写偏光写真   上記の『右巻き水晶』全体の接写偏光写真 

 ところが、話がややこしくなりますが、『巻き水晶』は『水晶』と呼ばれ、『巻き水晶』は『水晶』と呼ばれています。なぜこのような紛らわしいことになってしまったかと言いますと、当初は水晶の未加工の結晶を肉眼で見て、錐面と柱面の間に現れる小さな面が右側にあるものを『右水晶』と呼び、左側にあるものを『左水晶』と呼んで区別していました。ところが、後世になってX線回折装置という近代のハイレベルな分析装置で分析したところ、内部の微細な結晶のらせん構造の回転方向は、それとは左右が逆であることが判明して、ややこしいことになってしまいましたが、そのままになっているのです。


偏光フィルターの活用例

★ ガラスなどに映った像の消去

 ガラスの表面などに映った像は、斜め横から見ると偏光しており、その偏光に対してクロスニコル状態にした偏光フィルターによって消去できます。その実例を次に示します。撮影する角度によって消える度合いが変わります。ただし、鏡に映った像は消去できませんし、金属表面の反射光は偏光していないので消せません。
【注】『クロスニコル』とは、光の振幅方向と直角に偏光子をセットした状態のことであり、ニコルとは研究者の名前です。

ニューヨークの5番街と57丁目の交差点の南東角にあるティファニー本店の西面

左:通常撮影では、正面入り口(星条旗の右下)の上付近などの壁面に反射光が見られ、
  その右側の大きなガラス面には斜め向かいのビルが映っている。左奥に少し見えている
  白いビルは、ルイヴィトン。
右:クロスニコルの偏光フィルターで、それらの反射像を消去した写真。

ニューヨークの5番街と57丁目の交差点の北東角にあるルイヴィトンの南面の
ショーウインドー(ティファニーの北側の真向かい)

左:通常の撮影では、ガラス表面に斜め前の景色が写っていて、ショーウインドーの内部が
  よく見えない。
右:クロスニコルの偏光フィルターをレンズの前に装着して撮影した写真。まるでショー
  ウインドーのガラスが消えたかのような雰囲気に写っている。


★ 木の葉などの表面乱反射光の除去による色の濃色化

 木の葉の表面などは、太陽光が乱反射していて、実際の葉などの表面の色よりも色の鮮やかさが低下しています。そこで、偏光フィルターでこの偏光した乱反射光を消去しますと、葉などの本来の色が出ます。このようにして紅葉風景などを撮影しますと、次に実例を示しますように、色彩鮮やかなとても美しい写真になります。これは特に紅葉の撮影に向いていると思います。

カナダ・メープル街道の一番の名所であるローレンシャン高原のMont-Tremblantの
上から見た紅葉風景(地平線の果てまで紅葉が続きスケールの大きさは世界一クラス)

上下の写真とも左:普通の撮影なのでメープルの葉の色がくすんでいる
上下の写真とも右:クロスニコルの偏光フィルターをレンズの前に装着して撮影


そこで撮影した紅葉のアップの写真
左右の写真の撮影方法は同上

 上に示した山の上から下界を見た景色の写真は、少し朝モヤがかかっていたために、全体的に鮮明度が低下しております。そこで、下界で撮影したより鮮明な写真を次に4枚だけ示します。



★ 青空の濃色化

 天空から降り注ぐ散乱光を偏光フィルターで除去すると、空の青さが一層増しますが、その色が濃くなりすぎてやや不自然な写真となります。その実例を次に示します。

アメリカ・サウスダコタ州にあるMount Rushmore National Memorial

山上の岩に彫刻された像は、左からワシントン、ジェファーソン、ルーズベルト、
リンカーンの各大統領
左:通常撮影
右:クロスニコルの偏光フィルターをレンズの前に装着して撮影した写真

アメリカ・ワイオミング州にあるDevils Tower

 ここは、Steven Spielberg監督の映画『未知との遭遇』(原題:”Close Encounters of the Third Kind”)のメインの舞台となり、このDevils Towerは映画の後半部には頻繁に出てきます。この高さ246mの大きな岩の上方からエイリアンが乗った宇宙船が現れ、地上に降りて人類と最初のコンタクトをとった場面に使われたことでよく知られており、ここはアメリカで最初に指定された国定公園です。ただし、行くのがかなり不便な場所にあり、日本人はほとんど行かないと思います。
 左右の写真の撮影条件は同上

 その映画の30周年特別記念版をニューヨークで購入しましたが、その本編1枚を含むDVD3枚組み(Region #1)のセットの写真を次に示します。その箱の表面や付録の解説書の裏表紙にも、このDevils Towerでの映画のシーンがプリントされています。

左下:この映画のDVDの箱の表面
右下:この映画の解説書の裏表紙(表表紙は箱の表面と同じ図案)


★紅葉の色を鮮やかに撮影する方法

 これはカメラマンがよく言う『透かしモミジ』と呼ばれているやり方ですが、太陽とカメラの間に紅葉している葉がくるようにして、太陽光がその葉を透過する状態で紅葉を撮影する方法です。ただし、葉が少なくて葉の周囲から太陽光が直接カメラに入る場合には、少し斜めの方向から撮影して、太陽光が直接カメラに入らないようにしないといけません。
 曇りの日や反射光で撮影しますと、色がくすんだり(前者)、葉の表面の太陽光の乱反射で白っぽく(後者)写ります。ただし、曇りの日に撮影しますと、影の無い、コントラストのきつくない、しっとりと落ち着いた良い雰囲気に写り、味わい深い写真になりますので、それはそれで意味があります。花の接写などのような場合には、むしろ薄曇りの方がよいことが多く、逆に雄大な景色の場合は、絵葉書的ですが、晴れていて背景の空が青くて雲が少し浮かんでいるようなのがよいでしょう。
 紅葉したモミジの葉を透過光反射光で撮影した実例を次に示します。2枚とも撮影したままであり、色補正など全くしていませんが、同じ葉とは思えないくらい両者の色合いは大きく異なって写っております。

 透過光で撮影したモミジの紅葉
(透明感があり色がとても鮮明)
 反射光で撮影したモミジの紅葉
(色が濁っていて美しくない)

 上記の両者の関係は、パワーポイントの原稿やDVDに入った映画などを見る時に、液晶モニターで透過光として見るのと、液晶プロジェクターでスクリーンに投影して、その反射光で見るのによく似ています。



天体写真 ― 星空のロマン ―

 スケールの大きさ・雄大さなどにおいて、天体以上の被写体はないでしょう。天体写真は、月の撮影に始まり、月の撮影に終わるとも言われておりますが、最も地球に近い天体である月でも、地球から約36万km離れており、その直径は3470kmあります。逆に最も遠い天体は、約300億光年もの距離にあり、想像を絶する、まさに天文学的な距離の遠方にあります。ちなみに1光年とは、なんと9,460,730,472,580.8km(約9兆km)です。また、現在までに確認できている星の中で、最大のものは「おおいぬ座VY星」で、その大きさは、直径が約28億kmで地球の約4万倍という巨大なサイズのものです。このような、もの凄いスケールの被写体ですから、普段やっているポートレートや花の撮影とは桁が違います。違いすぎて比較の対象になりませんねー。
 天体を眺めていると、そのスケールの大きさで、この世の雑念や悩み事を忘れて、別世界のロマンチックな雰囲気に浸ってストレス解消に役立ち、ひいては健康増進に寄与すると思いますので、皆さんもぜひトライしてみて下さい。肉眼で眺めるだけでもいいですし、双眼鏡で見るとさらにいいです。ちょっと大掛かりになりますが、最後は、天体望遠鏡にチャレンジしてみて下さい。もちをついているウサギは見つかりませんが、月のアバタ(クレーター)が、はっきりと見えます。
 筆者の本来の本職であるバイオの世界では、天文学とは全く逆の超微小の世界を扱っており、長さの単位としてはnm、ミクロン、オングストロームなどといった、一般の人には信じられないくらい小さなものが使われます。ちなみにnm(ナノメートル)とは、10-9メートル(10億分の1メートル)のことで、顕微鏡でも見ることのできないほど短い長さなのです。
 天体写真の難しさは、月を除いてすべて小さな光の点で、被写体としては非常に暗いために(特に星雲)、写真撮影をするには露光時間をかなり長くしないときれいに写りません。しかし、長時間露光をすると地球の自転のために、点のはずの星が軌跡を描いたような弧状の筋に写ってしまいます。もっとも、それを防ぐには赤道儀の自動追尾システムを使えば大丈夫です。また、星はとても小さいので、高倍率の天体望遠鏡や超望遠レンズで拡大して撮影しますが、それらの機材がごくわずか動いても、はるか遠方にある星は、大きく動いてしまい、視野の中心部に捕捉するのが大変ですし、撮影時にカメラがごくわずかに動いただけでも、遠くの星はなりブレた写真になってしまいます。これは、大型三脚を使っても避けられません。この点が天文写真の一番厄介なことです。さらに、星を見ると、きらきら・ぴかぴかと瞬いて見えますが、これは地球の大気(空気)の乱れによって本来『点』として見えるはずの星の像が揺れたり、ぼやけて見えたりする現象で、シンチレーション(明るさの変化)とか、シーイング(ゆらめき)と呼ばれており、これらは写真として鮮明な像に写らない原因になります。実際に天体写真を撮影したことのない人には以上のような問題点や苦労は分からないと思います。その点、月は星に比べると非常に大きくて明るいために、撮影は最も簡単ですので、天体写真の入門としては、まず月の写真から始めるとよいでしょう。さらに、三日月とか満月とか、日々その形が変化するのも見ていて楽しいものですが、日本では古来から月に親しみを持たれていて、たとえば万葉集を調べましたところ、全4536首中に月の歌が、なんと202首もありました。この数は、花(植物)で最多の萩の138首をはるかに上回るものです。
 参考までに書きますと、撮像素子が35mmフルサイズ(35 x 24mm)のカメラであれば、レンズの焦点距離の約1/100のサイズに、月がその画面に写ります。すなわち、1600mmレンズであれば約16mmの直径の月に写ります。なお、一眼レフデジタルカメラで最も普及しているAPS-Cサイズのカメラであれば、その1.6倍の大きさに写ります。小さく撮影した画像を拡大すればサイズは大きくなりますが、鮮明度が低下しますので、原版から高解像度でなるべく大きく写して下さい。
 通常は、天体望遠鏡(口径5インチ、焦点距離39インチ、倍率50〜750倍)やカメラ用の超望遠レンズ(1600mmなど)と35mmフルサイズのデジタルカメラの組合せなどで、天体写真を撮影しておりますが、その月面写真の実例を次に示します。さらにおおまかな月面地図も掲載しておきます。この月面地図はhttp://www2s.biglobe.ne.jp/~yoss/moon/moonmap.html より借用したものです。地球上からは常にこの面しか見ることができませんが、当然のことながら月にはこの裏面もあり、NASAなどからその写真が提供されております。



『地球儀』ならぬ『月球儀』

 地球上から見える月面は、自転の関係で常に同一面であり、その裏面は地上からは決して見ることはできません。裏面は人工衛星などで月の裏側に回りこまない限り見ることは不可能です。地球儀と同様に月球儀というのがあり、たまたま、ひょんなことでもらいましたが、それには、もちろん裏面もきちんと描かれております。その月球儀の写真を次に示しますので、月の裏面の様子をぜひご覧下さい。表面よりもクレーターが多いようです。

普段見ている月面(表面)  左記の裏面(地上から見るのは不可能)

天体写真の実例をいくつか以下に示します。

1997年3月9日(日)の10時30分頃に撮影した部分日食

 この写真は、日陰にした紙に天体望遠鏡で太陽を投影した像をライカM6で撮影したもので、太陽は実際と上下が逆になっている。このように撮影日時も一緒に写してあると、後年になってからでもいつの写真かすぐにわかり、とても便利。


2012年5月21日に撮影した金環日食


2012年6月6日10:36に撮影した金星の太陽面通過の写真
(太陽撮影用の特殊減光フィルター使用)


左: 成田発JFK行きANA1010便の座席から撮影した雲の上の夕焼け(離陸1時間後)
右: アメリカ・サウスダコタ州Rapid Cityで撮影した2013年の中秋の名月(+1日)


左: フィンランドの北極圏にあるイナリ湖付近で撮影したオーロラ
右: オーロラの反対側の空(満天の星・星・星、こんなにたくさんの星があるとは!)


ラジコンヘリによる空撮

 10歳から写真を始めて現在に至るまで、実に様々な写真撮影を行なってきました。その中でも特筆すべきは、マイナス30〜40℃の極寒のフィンランドの北極圏でのオーロラ撮影、クマに追っ掛けられたカナディアンロッキーでの野の花の撮影、ジャガー出没の危険にさらされながらのコスタリカの山奥でのケツァール(火の鳥)の撮影などです。しかし、下記のようなデジタルカメラ搭載のラジコンヘリでの空撮の困難さは格別です。普通の景色や花などの撮影は、空撮の困難さに比べれば簡単過ぎます。また、カメラが真珠の光沢層表面に写り込まないように真珠の珠のクローズアップ撮影をするのも至難の業です。
 ラジコンヘリでの空撮の困難さは、なんと言ってもヘリコプターの操縦の困難さにあります。すなわち、リモコン(コントローラー)の2本のスティックレバーを前後左右に微妙に操って操縦するのですが、なにしろ【上昇・下降】、【前進・後退】、【右移動・左移動】、【右回転・左回転】などの操作を極めて迅速かつ的確にしないといけませんし、ちょっと風が吹いても風に流されて細かいコントロールが不能になります。飛んでいるヘリコプターを見ながら操縦しますが、同時にコントローラーのモニターも見ないといけませんし、微妙なコントロールが大変で、機体をベストポジションになかなか移動できず、ホバリングもとても難しいのです。つまり、写真撮影そのものよりも、ヘリコプターの操縦が非常に難しいということです。幸いなことに、本体にジャイロが搭載されておりますので、機体の水平は自動的に保持されます。その他にも、かなりのハイテク機能があります。写真は、静止画も動画(ムービー)も撮影できます。ちょっとした操縦の不手際で地上に墜落することもあり、時には機体が致命的なダメージを受けて修理に出すということになります。専門家の話によりますと、2〜3機潰すくらい操縦しないと、うまくならないそうです。私は現在3機所有しておりますが、そのうちの一番大きな機体は、購入直後のまだ飛行練習中に操縦ミスで故障させてしまい、目下修理に出しております。それぞれの機体の操縦法が異なりますので、複数の機種を所有していると、頭が混乱して操縦などが大変です。
 以下に示す実例は、伊賀市霧生にあるメナード青山リゾート(総面積は、なんと百万坪!!)のハーブ園に咲く今期最後の花である満開過ぎのセージのお花畑を、特別に許可をいただいて、関係者立会いのもとで撮影したものです。皆さんのご好意に深謝します。訪問した11月下旬は、主な花は終りで、かろうじてセージの花が残っていました。
なお、ラジコンヘリは、思わぬ方向へ飛んで行ってしまうこともあり、かなり広大な場所がないと安全性の確保ができませんので、安易に購入しないようにご注意下さい。

ラジコンヘリの機体の一例
(機体の下に角度可変のカメラが付いている)
 左記用のリモコン


 上記の機体で撮影した空撮の実例    地上から普通のデジカメで撮影した写真

 今回さらに下記の機種も使用しました。このような形式のヘリコプターは、正式には『クアッドコプター』といいます。これには、3軸ジャイロ、3軸Gセンサー、3軸地磁気センサーの搭載により、初心者でも安心して飛ばせる高い安定性を有しております。さらに素晴らしいのは、たとえば『カムバック機能』というのもあり、遠くへ飛んで行ってしまっても、リモコンのこのスイッチを押せば、自動的に自分の所へ戻って来てくれます。

 普通のヘリコプターより飛行安定性の高いクアッドコプター   左記用のリモコン

上記のクアッドコプターで撮影した写真を次に示します。

ハーブ園の中にある道路などの空撮   もう終わりのセージの花を空撮

 春の花のシーズンになったら、きれいな花の咲き乱れる花壇の空撮などを本格的にしますので、どうぞご期待下さい。



 
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