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教会やレコードでパイプオルガンを聴く

 これは、少し前にアップロードしたレコード音楽を真空管増幅・バランス伝送で聴くの続きとしての位置付けのものであり、そちらもぜひご参照ください。ここでは、欧米の有名な教会のパイプオルガンなどの紹介や、レコードでパイプオルガンを聴くのに適した超低音まで余裕で再生でき、各教会の音響パラメーター(主に残響)を設定できるパイプオルガン・レコード再生に適した愛用の特別なオーディオシステムを紹介します。これも前回の原稿と同様にバランス伝送システムですが、カートリッジからスピーカーに至るまで、全てが前回のとは完全に別系統のシステムです。
 1976年7月25日から30日まで、ドイツ第2の大都市である北ドイツのハンブルクで開催された『第10回 国際生化学会』に出席し、私のドクター論文の一部にもなっている肝臓の酵素の研究成果の発表もしましたが、その時のツアーで、ハンブルクの中心部にある聖ヤコビ教会 (St. Jacobi Kirche)で、パイプオルガンの演奏を聴いた時に、ものすごい感銘を受け、すっかりパイプオルガンのとりこになってしまいました。それ以前から音楽は大好きでしたが(特にモーツァルト)、ここはパイプオルガンの音色の本当の凄さに目覚めた記念すべき所です。この時、私はまだ20歳代の終わりに近い若き研究者の卵(or 孵化直後)でした。このオルガンは、それ以前に聴いた日本のものとは比較になりませんでした。すなわち、教会付近の景色、教会の外観と内部の重厚さ、パイプオルガンのルックスと音の響きのスケールの大きさ、残響、歴史など、総合的に見ると一般に日本のものは、それほどではありません。やはり音楽は、それが演奏される環境・雰囲気や音響効果が非常に重要です。特に教会のパイプオルガンは、その総合的なスケールの大きさと残響が特徴で、その面では他の楽器とは全く比べ物になりません。
 この聖ヤコビ教会にあるパイプオルガンは、1693年にアルプ・シュニットガーによって製作されたもので、すでに320年以上の歴史があります。1720年9月に専属のオルガニストが亡くなり、後任を募集したところ、あの偉大な大作曲家でパイプオルガン曲を約250曲も作曲したJohann Sebastian Bach (1685-1750) 、以下J. S. Bachと略す、を含めて8人が応募しました。その結果、J. S. Bachが合格したのですが、当時のハンザ同盟地域の習慣で、多額のお金を納めないとなれないことがわかり、就任を断ったというエピソードが残っています。彼が35歳の頃のことでした。余談ですが、彼は決して貧しくはありませんでしたが、2回結婚して合計でなんと20人もの子供がおり、かなりの節約家としても有名です。また、Harold C. Schonberg著の”THE LIVES OF THE GREAT COMPOSERS”を読むと、J. S. Bachは頑固で怒りっぽく、付き合いにくい人間であり、弟子たちも子供たちも、この厳格な性格を恐れていたらしいです。さらに彼の作品には、どの大作曲家の作品よりもユーモアが少ないとのことです。


北ドイツ・ハンブルクにある聖ヤコビ教会の外観とその中にあるパイプオルガン
(1976年の夏にこれを聴いてパイプオルガンのとりこになった記念すべきもの)


 その後は欧米へ旅行するごとに、大きな教会を訪れてパイプオルガンを見るだけでなく、可能な限りその音色を聴き、記念にその教会のパイプオルガンで演奏した曲の入ったCDがあれば必ず買って帰ります。本当はレコードが欲しいのですが、レコードを売っているような教会は、今や残念ながらどこにもありません。昔はレコードを売っていたのでしょうが。
 ところで、日本で普通に『パイプオルガン』と呼んでいる楽器の名称は、日本だけの呼び方であり、欧米では単に『オルガン』と言います。ちなみに英語では”organ”、ドイツ語では女性名詞の”Orgel”で、『オルゲル』と発音します。小学校で音楽の時間などに弾いてもらった小型のアップライトピアノのような形の楽器を日本では単に『オルガン』と呼んでいますが、それは正式な英語では”reed organ”、ドイツ語では”Harmonium”です。私はパイプオルガンのレコードやCDは、かなりたくさんコレクションしておりますが、よくチェックしてみると確かに”pipe organ”という表示ではなく、単に”organ”か”Orgel”と記載されています。ただし、純日本製のCDでは、『パイプオルガン』と書いたものがあります。余談ですが、ドイツ語の名詞の単語は、文中のどこにあっても最初の文字は常に必ず大文字で書くという規則があり、さらにすべての名詞に男性・女性・中性のいずれかの性が割り当てられており、それによって冠詞が異なるなど、ドイツ語を勉強する時に各名詞の性を覚えるのが大変です。もっとも、フランス語などでも同様ですが。私はドイツ語を非常によく勉強しましたので、音楽の分野でも非常に役立っております。
 Organの語源はギリシャ語の”οργανον”であり、元々は『器官・道具』という意味です。私が関係している生命科学や医学の分野でorganと言えば、心臓・肝臓などの『器官』のことであり、organという専門用語は、よく使います。生命体の構成単位は順にcell → tissue → organ → whole bodyとなります。パイプオルガンの起源は、すでに紀元前数世紀からその原形の存在が知られており、なんと紀元前264年にはパイプオルガンの原形のような『水オルガン』が作られていました。このように、パイプオルガンの歴史は特別に古いのです。楽器の中では最古クラスでしょう。
 とにかくヨーロッパの古い教会で聴くパイプオルガンは、荘厳、重厚、深遠、雄大、威厳、などなど、その凄さ・ド迫力は言葉ではとても表現できません。そのトータルの意味でのスケールの大きさにおいて、他の楽器とは全く比較になりません。『パイプオルガンは楽器の王様である。』とモーツァルトは言いました。また、パイプオルガン曲の作曲家で最も有名なのは、すでに上述したJ. S. Bachであり、約250曲も作曲しました。その中でも特に有名なのは『トッカータとフーガ BWV565』で、パイプオルガン曲といえば、どこでも先ずこの曲が出てきますし、もはや聴き飽きています。余談ながら、ドイツ語の”Bach”は、普通名詞ならば『小川』という意味であり、音楽家の”Bach”は、日本式に言うと日本にもよくある苗字の『小川』になりますので、小川さんは実に偉大な世界一の作曲家であるとなります。彼の父親は、アイゼナッハで非常に尊敬されていた教会オルガン奏者でしたが、彼が10歳の時に亡くなっています。
 パイプオルガンは、教会などの建築構造物の一部として建造される完全受注一品生産楽器であり、教会の広さ、内部のデザイン、残響の長さ(通常は数秒以内くらい)、施主の希望などに従って製作するもので、その建物と一体となっており、同じものは他には全く存在しませんし移動も不可能ですので、その教会へ行かないと、その音色は聴けません。これらのこともパイプオルガンの特徴の一つです。特にドイツのパイプオルガンは、質と数において最高ではないでしょうか。パイプオルガンの音域はすべての楽器中で一番広いのも特徴ですが、後述のように現実には、配置の関係で高音域は、座席まではそれほども聴こえてきません。ヨーロッパの古い教会のものは、設置後、数百年の間に何度か改修・改良されていることが多いようです。現在、コンサートホールなどに普通のパイプオルガンを導入する場合でも、予算はン億円以上必要で、年間のメンテナンス費用は数百万円以上もするそうです。
 教会にあるものとコンサートホールにあるものの最大の違いは、その設置場所・位置であり、教会では前に最も重要な祭壇があるため、一般にパイプオルガンは最後部の上部に設置されていて、普通は演奏者の姿は、ほとんど見えません。大きな教会では、さらに横にもある場合があり、後述のようにドイツのフライブルク大聖堂 (Freiburger Münster) には、4台もあります。それに対して、コンサートホールでは、通常は前の舞台の奥の上部に設置されています。そのために、教会では後ろから届くパイプオルガンの音を板製の硬い長椅子に座って聴き、コンサートホールでは、クッション付きの快適な一人掛けの椅子に座って正面にあるパイプオルガンと向き合って聴くことになりますので、高音になるほど指向性が強くなるために、教会よりもコンサートホールの方が、より高い音まで聴こえるはずです。しかし、パイプオルガンは、あらゆる楽器中で超高音から超低音まで、周波数レンジの幅が最大ですが、そのパイプの配置に問題があると思います。すなわち、どこでも超低音用の太い大きなパイプ群が最前列に並んでおり、超高音用の小さいパイプは、その後ろに隠れて配置されています。最も小さいのは1センチ以下です。超高音は指向性が非常に強くて直進する性質があり、その前に太い大きなパイプが邪魔しており、しかもパイプオルガンが教会の後部の上の方に設置されていますし、後ろ向きになって聴きますので、せっかく超高音まで元のパイプでは出ているのに、座席までは高音はあまり届いていないと思います。なので、なぜ細いパイプを最前列に配置し、太いものほど後ろに配置しないのでしょうか。これはパイプオルガンの大きな謎です。
 家庭にあるような通常のオーディオシステムでは、パイプオルガンの音でも前にあるスピーカーから聴くと思いますが、これは実際の教会とは全く逆の方向から音が届くので、私のように教会で生のパイプオルガンを聴きなれた者には、前から聴こえてくるパイプオルガンの音は非常に不自然なのです!このことがパイプオルガン音楽再生の最大の問題点なので、教会で聴くような状態にしようとすれば、後ろ向きになってスピーカーの音が後ろから来るようにして数秒の残響を付加して聴かないといけませんが、そんなことをしてパイプオルガンのレコードやCDの音を聴いている人が現実にいるでしょうか?!しかし私は、そのようにしてよく聴きますが。その際にL/Rは、あまり気にしなくてもいいのです。教会で録音してレコードやCDに入っているオルガン曲は、各音の粒立ちを鮮明にするためか、パイプオルガンにオンマイクで録音されているようで、一般に残響はあまり入っていません。しかし、実際に欧米の古い大きな教会で聴くと、かなり長い残響があります。


◎古い大きな教会のパイプオルガンの音は、後ろから数秒の残響と共に聴こえてくる。
◎コンサートホールや家庭などのオーディオシステムは、前から聴こえてきて残響が
 足りない

 ○両者は聴こえてくる方向が全く逆で、前から聴こえてくる残響なしの
  パイプオルガンの音は、とても不自然!

 ○生の教会の音に近付けるには、スピーカーを背にして残響を付加して
  聴かないといけない!
◎生の音楽を知らずしてオーディオを語ることなかれ! 
  (各自の自由であるが、これは私の自論。)
◎装置に大金を投入するよりも生の音楽を聴きに海外の本場などへ行こう! (同上)
  私は生派なので、あまり高価な装置は持っていません。この世界の上限は
  天井知らずですから。


 音楽でも美術でも同様ですが、他人の演奏や作品を批判するのは簡単ですが、自分で実際にやってみて初めて、それぞれの苦労・難しさや良さなどがよくわかります。ただ聴くだけ・見るだけでは、それらを深く理解し、正しく批判するのは無理です。私は特に陶芸の分野で、いつまでも埋まらないプロとのギャップの大きさを実感しております。陶芸の世界も実に奥が深く難しいのです。また、ドイツの教会のパイプオルガンの演奏台の前で、オルガニストに色々と説明を受けて教えてもらったことがありますが、その時にパイプオルガンをスイスイとうまく弾きこなすのは、私にはとても無理だと実感しました。4 段もある手鍵盤を両手で操作し、両足でも足鍵盤やペダルの操作をして、さらに演奏台の前の両サイドにたくさんあるストップ(レジスター)ノブのセットなどもしないといけませんし大変です。もっとも、家庭にある電子オルガン(エレクトーン)と類似なので、慣れればパイプオルガンでもうまく弾きこなせるようになるかと思いますが、そう簡単に常に練習することはできませんし、やはり素人が趣味でパイプオルガンやるのは、とても無理ですねー。
 日本最大級のパイプオルガンをイタリアの老舗で設計・製作し、東京カテドラル・聖マリア大聖堂へ運んで設置し、試弾までの実際の流れを収録したDVDと、パイプオルガンの演奏の仕方の基本をわかりやすく解説した入門用のDVDの実例を次に示します。普通では見ることのできないような部分も多く、まさに『百聞は一見に如かず』です。これらを見て、とても参考になりました。パイプオルガンの基本を知るには、これらは最適かと思います。いずれも日本製で、簡単に入手できるはずです。


左の写真: パイプオルガンのイタリアの老舗での設計・製作から日本の教会への設置・
     試弾までの実際の流れを詳細に収録したDVD
      (『パイプオルガン誕生』 NHKエンタープライズ 3800円)
右の写真: パイプオルガンの演奏の仕方の基本をわかりやすく解説した入門用のDVD
      (『パイプオルガン入門』 コウベレックス 5900円)


★ウィーン楽友協会の『黄金のホール』にあるダミーのパイプオルガン!

 ウィーンフィルの本拠地の『ウィーン楽友協会(Gesellschaft der Musikfreunde in Wien, 通称:Wiener Musikverein) 』(1812年設立)の中にある『大ホール(Großer Saal) 』は、通称『黄金のホール(Goldener Saal) 』(1870年建設)と呼ばれており、毎年ニューイヤーコンサートが開催されるホールとして日本でもよく知られていますが、そのチケットを入手するのは困難です。さらに最高の席は、なんと50万円もします。日本人の女性で和服を着て聴きに来ている人もいます。このホールへ行ったこともありますが、チケットの入手は、非常に困難でした。ここのニューイヤーコンサートのDVDを時々日本で買っています。このホールは通称のとおり、内部が金ぴかで、とてもゴージャスです。このホールの音響効果は非常に良く、なんとホール後部には『立ち席』があるのも特徴です。しかし、このホールで最もユニークなのは、パイプオルガンであり、次の写真に写っている中央のものはダミーで音が出ません。本物のパイプオルガンは、その下の少し奥にあり、客席からは見えないように隠してあります。なぜそのような配置になっていのるかですが、オーケストラの各楽器の音とパイプオルガンの音がよく融和するように、それらと同じ高さに設置してあるのだそうです。しかし、ダミーと本物のパイプオルガンの両方があるのは非常に珍しく、こんな例は他には知りません。



ウィーン楽友協会の『黄金のホール』にあるダミーのパイプオルガン (前部中央)



 私は今までに非常に多くの欧米の教会を訪れましたが、その中でも特に印象深いものは、訪問回数では別格のニューヨークのセント・パトリック大聖堂 (St. Patrick’s Cathedral)の他に、北ドイツ・ハンブルクの聖ヤコビ教会 (St. Jacobi KIrche)、南ドイツのヴィース教会 (Wieskirche)、同ウルム大聖堂 (Ulmer Münster)などです。全ての教会名の横文字の表記法は、原語のままです。実は私は以前にドイツ語を猛勉強しましたし、ドイツには何かと縁があるので、ドイツ語の教会名などにも色々と解説を加えたいのですが、止めておきます。音楽とドイツ語は、関係深いので、よく勉強して非常に良かったです。ベートーベンのピアノ曲を演奏させたら世界一と言われた親日家で、父親がニコライ教会のオルガニストだったWilhelm Kempff (1895-1991)の姪のDaisyさんとも知り合いであり、ドイツで彼女の推薦するKempffのCDを一緒に買いに行ったこともあります。彼女は当時、ハイデルベルク大学の小児科の先生をしておりました。彼女は高校生くらいまで京都に住んでいたので、日本語がベラベラで、日本人の発音と区別が付きません。さらにクリスマスカードは、日本語のワープロでプリントして送ってきます。ご主人もドイツ人ですが、娘さんの名前は、なんと”Hanako”です。
 私は、ずっと以前からドイツのいろんなことが大好きで、老後はドイツに住もうかと思っていました。しかし、まだ仕事(特に3大学での講義と各種の商品開発)が多忙で、今はそれどころではありません。


★セント・パトリック大聖堂 (St. Patrick’s Cathedral) in ニューヨーク

 1878年に完成した全米で最大規模の大聖堂です。ニューヨークのメインストリートである五番街の東側に面した繁華街のど真ん中にあり、例の巨大なクリスマスツリーで有名なロックフェラーセンターの斜め前に位置しております。この大聖堂に非常に多数ある美しいステンドグラスは本当に素晴らしいので、そのごく一部を、ここに紹介します。
 セント・パトリック大聖堂は私には別格で、毎年2~3回は訪問しており(ただし、その多くは同時期内での訪問回数)、今までの訪問回数は合計で50回以上になるのは確実です。なので、ここの売店に売っているものは、後にその一部の写真を示すCDをはじめとして、かなり買い集めました。この教会の入り口付近の掲示で下記のようなのを少し前に見たことがあります。ただし、この数値などは適当に仮に書いただけですが、この”Service”と”Concert”の違いに注意してください。すなわち、午前中の部は日曜礼拝としてのパイプオルガンの演奏があるということであり、午後は単なるパイプオルガンの演奏会・音楽会なので、信者でなくても誰でも気楽に音楽を聴きに来てくださいという意味が含まれていますので、私はその日の午後に聴きに行きました。

   July 19 Sunday
   Organ Service 10am – 11am
   Organ Concert 2pm - 3pm


セント・パトリック大聖堂の約百年前の絵はがき(左)と現在の実物の写真(右)
(今は高層ビルに囲まれていて教会全体が太陽光に照らされることはない)



左はセント・パトリック大聖堂の模型キット(右)を大変苦労して自分で組み立てたもの

 完成模型のサイズは、幅:20cm, 奥行き:41cm, 高さ:34cmで、写真の左側中央が5番街に面した正面入り口。これを見ると屋根が十字架になっているのがわかるが、周辺の高層ビルに立ち入れないので、この大聖堂をこのように上から見ることは不可能。正面入り口を入ったすぐの真上に下記のパイプオルガンがある。


以下は最近のクリスマスの頃に撮影したセント・パトリック大聖堂の内部の写真です。クリスマス・リースや生のポインセチアの花がたくさん飾ってあります。

 上に示す模型キットの箱に挿入した赤い矢印の部分の丸いステンドグラスの内側が、この2枚の写真赤いの矢印の部分で、そのすぐ下にパイプオルガンがある。



右の写真: 実物大に近いかなり大きいキリスト降誕(Nativity)の模型
(これは専門用語で “Christmas Crib” または単に “Crib”と呼ぶもの)


 
このような素晴らしい環境・雰囲気の中で聴くパイプオルガンは最高で至福の時間


 
ここのステンドグラスは細工が細かく特別に美しくて枚数も非常に多いので見応えがある


左の写真: セント・パトリック大聖堂で買ってきた何枚もあるCDのうちの2枚
右の写真: 同CDを再生している様子 (残念ながらこの大聖堂のレコードは所有しておらず、
     代わりにCDをこのようにして時々聴いているがCDの再生は面白くない)


★ヴィース教会 (Wieskirche) in 南ドイツ

 ヴィース教会の完成は1757年で、その外観の素朴さに反して、内装のゴージャスさ、美しさで圧倒されました。天井も非常に美しく、全体的にちょっと装飾過剰気味です。これらの写真を撮影したのは2010年12月で、その時は付近は一面に雪が積もっていました。その直後にニューヨークへ行き、毎年恒例のクリスマスを迎え、またしても上述のセント・パトリック大聖堂を訪問しました。


  左の写真: 雪のヴィース教会



パイプオルガンや天井も含めてこの教会内部の全ての装飾が非常に明るくてゴージャス
(北ドイツの教会とは対照的かも)



全面がこんなに美しく豪華な装飾の教会の天井はあまり見たことない


★ウルム大聖堂 (Ulmer Münster) in 南ドイツ

 1890年に完成したウルム大聖堂の塔は、高さが約162mもあり、世界一高い教会として知られています。ウルム大聖堂のパイプオルガンのパイプの長さは3mmから13mまで、合計で9千本くらいあります。そしてこの教会の残響は、なんと最長で約9秒もあるそうです。
 実は1998年の7月に、ウルム大学のサマー・セミナーの講師として招待されて講演などをしたことがあり、ウルムに少し滞在していたので、ウルムには特別の思い出があります。その時に何回かごちそうしてもらった本場ドイツの生ビールと料理は非常に美味しかったです。昼食時にもビールを飲みました。ここはアインシュタインの生誕の地としても有名で、町の中にある噴水などに彼のユーモラスな顔の彫刻が付いているなど、あちこちにアインシュタイン関連のものがあります。


ドナウ川沿いにあるウルム大聖堂 (塔の高さが目立つ)
この塔の高さは約162メートルで教会の塔としては世界一



合唱のハーモニーも残響の長いこの教会で聴くと眼に涙が潤む(ウルム)ほど特に素晴らしい
(こんな感動は古い大きな教会でしかあり得ない)



ウルム大聖堂のパイプオルガン



右側の写真: ウルム市内にあるアインシュタインの噴水の横に立つ筆者
(ウルムはアインシュタイン生誕の地なので彼に関連したものが多くある)


 
 左の写真: 大変お世話になり色々と面倒を見てもらったウルム大学の教授と共に講演後に
 右の写真: 講演したウルム大学の会場から中庭を見たところ


★フライブルク大聖堂 (Freiburger Münster) in 南ドイツ

 1513年に完成し、ヨーロッパ有数の美しい塔とステンドグラス、そして素晴らしい音色のオルガンと残響で知られているフライブルク大聖堂です。ここにはなんと4台のパイプオルガンが、下にそれらの配置図を示すように、ユニークな位置に設置されており、様々な礼拝によって使いわけられています。さらにその4台のパイプオルガンは、一か所の中央コンソールからそれぞれを同時に操作し合奏することも可能という凄い特徴があります。この大聖堂の残響は約6秒とのこと。

左の写真: フライブルク大聖堂の全景
右の絵: Friedrich Eidner, Freiburger Münster mit Fischbrunnen. 1864, Aquarell,
Augustinermuseum.  (このドイツ語を補足して和訳すると: Friedrich Eidner作、魚の泉と
            フライブルク大聖堂。1864年作、水彩画、アウグスチノ博物館蔵。)


★レコードでパイプオルガン曲を聴く


この大聖堂の4台のパイプオルガンを同時に一人で演奏した曲の入ったレコード (1974年)
このレコードの英文のタイトルは↓
THE FOUR ANTIPHONAL ORGANS OF THE CATHEDRAL OF FREIBURG PLAYED SIMULTANEOUSLY BY
E. POWER BIGGS
BACH/THE FOUR “GREAT TOCCATAS AND FUGES”

左の写真: ジャケット表面には4台のパイプオルガンと塔の写真が掲載されている
右の写真: 同裏面には大聖堂内部の見取り図と解説文が掲載されているが黒塗りの部分
       は次に拡大して示すパイプオルガンと中央演奏コンソールの位置を示している


この大聖堂にある4台のパイプオルガンと、それを演奏するための中央コンソールの配置図
(黒塗りの部分)

                1. Main Organ
                2 . Choir Organ
                3. Nave Organ
                4. Gallery Organ “St. Michael”
                5. Central Console


 このレコードを、フライブルクのパイプオルガンに最適なパラメーターにセットした特別のアンプ(周波数特性:10~100,000Hz, L/R出力200W+200W) と、パイプオルガンの最低音の再生に必要な10Hzくらいまでの超低音の再生が余裕で可能なアンプ内蔵のスーパーウーファー・スピーカーを組み合わせたユニークなシステムで聴いている時のアンプを次に示します。アンプの表示パネルに出ているように、CHURCHのFreiburgモードにして、ベストマッチングで聴いているところです。このようにしてパイプオルガンの曲を聴くと、床も少し振動し、下腹に響いて迫力満点で、まるでその大聖堂で聴いているかのような気分になります。ポータブル・オーディオやミニコンポでは、そのような迫力を体験するのはとても無理です。


パイプオルガン曲を聴くのに適したこのアンプを『CHURCHのFreiburgモード』にセットして
上記のフライブルク大聖堂のレコードを聴いているところでまさにベストマッチング


 超高音や超低音の体感具合をわかりやすくたとえますと、超高音は耳で感じるというよりも、頭のてっぺんを針で軽く突かれたような感じがしますし、超低音も耳で感じるというよりも、床の振動を足の裏で感じるとか、腹の底が響くというような感じですので、足裏マッサージ効果や便秘解消効果が少しあるのではないかと思っております。『ストレス解消と合わせて健康増進のためにパイプオルガンを聴きましょう!』となります。超低音は年齢に関係なく、何ヘルツでも聞こえます。たとえばその極端な例である1Hzの純音であれば、まさにちょうど心臓の鼓動を聴診器で聞いているような感じがします。ポータブル・オーディオのイヤホンやミニコンポのような小型スピーカーでは、パイプオルガンのような超低音の迫力を体感するのはとても無理です。それらでは振動を足裏や下腹で感じられませんから。
 音楽には2万ヘルツ以上の超高音よりも10Hzくらいまでの超低音の方が、はるかに重要というのが私の持論です。音の重厚さ、迫力、パワー、臨場感などにおいて、超低音の果たす役割は非常に大きいのです。特にパイプオルガンの曲の再生には。私の研究結果では、なぜか15歳くらいの子供は超高音聴力がピークで、数万ヘルツまで余裕で聞こえますので、数万ヘルツの音を出しても彼らには意味がありますが、20歳を超えると急速に2万ヘルツ以下までしか聞こえなくなり、再三あちこちで言っているように、シニア層では1.5万ヘルツでも聞こえないので、2万ヘルツ以上の超高音再生を無理してやってみても、あまり意味がありません。私自身もシニア層ですが、私は音楽や音響の研究もかなりしておりますので、20万ヘルツくらいまでの超高音再生などを含めて、普通に音楽を楽しむには全く必要のない種々の特殊な実験もよくしております。しかし2万ヘルツ以上の可聴周波数を超える超音波は、全く無意味なのではありません。同じ部屋なのに特定の位置でしか音が聞こえない装置を見たり聞いたりしたことがあるかと思いますが、あれは専門用語で『差音:differential tone』という原理を活用したもので、2種類の少し周波数の異なる超音波を一定方向に流すと、それぞれの音は超音波なので直進して耳に届いているのですが、それらは周波数が高すぎて全く聞こえませんが、その両周波数の差が可聴周波数の範囲内であれば、その音が聞こえてくるという原理によるものです。実はパイプオルガンで最低音の数ヘルツくらいの超低音を出そうとすると、たとえば約20mの非常に長くて太いパイプが必要となり、教会やコンサートホールへの収容が大変ですが、この差音の原理を利用して超低音を出しているところもあるようです。さらに、ハイレゾも2万ヘルツ以上の超高音なんて誰も聞こえないから全く無意味だと決め付けてはいけません。この差音が何らかの影響を及ぼして雰囲気を高めている可能性もあります。今後さらにこれも研究してみます。
 自分の音楽再生システムが何ヘルツまで出せるかを調べるには、Function Generatorで次第に周波数を上げていき、スピーカーから出る音を自分の耳で確認するのがよいでしょう。ただし、私のように音量を上げ過ぎてスピーカーを破損しないように注意してください。以前に実験中にヴォイスコイルから煙が出て来て、焼き切れたことがあります。1.5万ヘルツ以上になると、自分の聴力に問題があるので、2万ヘルツくらいまではフラットに音を拾える高性能マイクと周波数カウンターで測定します。マイクの周波数特性を超える超高音については、もはやこの方法は無理で、スピーカー端子に直接周波数カウンターのプローブをクリップオンして測定すれば、自分のシステムが何ヘルツまでの超高音の電気信号をスピーカーに送り込めるかがわかります。ごく普通のスピーカーでは、何万ヘルツ以上というような超高音の電気信号がそこまで来ていても、スピーカーでその音を再生するのは不可能ですし、出たとしても人間の耳には全く聴こえません。ただし、CD(2万ヘルツ)やハイカットフィルターのように、ある周波数で突然全く音が出なくなるのではなくて、次第に減衰していき、フェードアウト的に、ついには聞こえなくなるという具合です。


左の写真: 心音の研究などに使っている医家向けの本格的な聴診器
右の写真: Function Generatorからの200kHz (20万ヘルツ)のサインカーブの信号をアンプに入力し、そのスピーカー端子に何ヘルツの電気信号が来ているかを周波数カウンターで測定した結果。たとえスーパートゥイーターを接続してスピーカーから音が出ているとしても超高音過ぎて人間の耳には全く聞こえないが、周波数カウンターで測定すると、200.0812kHzと表示され、入力した信号がスピーカー出力端子まできちんと来ていることがわかる。



主にパイプオルガンのレコードを聴くのによく使っているカートリッジとシェルリードワイヤー

左の写真: このカートリッジは、パイプオルガンの再生に適しており、
      やや珍しいMI (MovingIron)型で、周波数特性は10~60,000Hz、
      チャンネルセパレーション40dB(1KHz)、出力は5mV、適合針圧は1.5gなど。
      MI型は、磁石もコイルも固定されており、針とともに鉄片が振動して、
      電磁誘導作用で発電するタイプ。

右の写真: 極微少のカートリッジの出力信号を最初に直接受け取るシェルリードワイヤーは、
      レコード音楽再生で最も重要なケーブル。導体は8N-Cu、純銀コーティング
      Pure Copper by Ohno Continuous Casting process 
     (PCOCC:単結晶状高純度無酸素銅)、純銀コーティングOFCを中心に高純度4種の
      素材を黄金比でハイブリッド、それを2層マルチストランド仕上げの画期的な設計。
      コネクターは燐青銅に銀メッキと高性能ロジウムメッキの二重メッキなど、
      わずか4cm足らずの、たかがケーブルではあるが、されど超高級なケーブル。
      このケーブルを実際にカートリッジ、およびシェルと接続するのは、両者の
      コネクター部分の4本のピンが非常に接近しており、しかも挿入するのが
      とてもかたいので、指先に力と器用さがないと、かなり困難。


左の写真: パイプオルガン曲を聴くためのレコードプレイヤーのカートリッジ付近の様子

右の写真: そのカートリッジのフォノケーブルの出力端子と次に示すフォノイコライザーを接続
      しているバランス接続用のケーブル。いかにも良い音がしそうなルックスの高級品で、
      音の良さは見ただけでも予想できる。フォノDIN 5ピン → XLRケーブルで、
      PCOCCの8N-Cu・4種ハイブリッド・ツインコアによる完全フローティング伝送、
      全接点部に最高グレードのロジウムメッキ、特別のシールド・被覆など実に
      素晴らしいもの。上述のシェルリードワイヤーと同じ会社製のペア商品。



『フォノDIN 5ピンコネクター』のメス(左)とオス(右)で金メッキされている
トーンアームから出たカートリッジの出力信号をバランス伝送するのに最初に必要な部分
 このコネクターは、通常の『DIN 5ピンコネクター』とそっくりであるが、微妙に穴の位置が異なり互換性は全くない。アメリカ製で、ケーブルを自作する場合、入手がやや困難である。



音楽の都ウィーンから、はるばる我が家へやって来た高性能特製フォノイコライザーの前後

 ウィーンにある教会と言えば、まずは屋根の模様がとてもユニークなシュテファン大聖堂(Stephansdom)が浮かびます。ここへは3回行きましたし、教会の塔では世界第三位の高さの塔にも登りました。
 入力インピーダンス(Ω)、入力容量(pF)、ゲイン(MM/MC)、イコライジング特性(RIAA / DECCA)などが様々なカートリッジやレコードの特性に合わせてベストな状態に細かくセットできるので、各カートリッジの性能を最大限に発揮できて、その上にバランス伝送入出力形式のとてもマニアックで素晴らしいもの。今使用中の外側のアウトプット用の赤い色のバランスケーブルは、スターリングシルバー製の超高級品。


 レコード音楽再生では、カートリッジからフォノイコライザー・プリアンプまでが最も重要であり、その間のケーブルの性能は、伝送ロスをなくし外来ノイズの遮断や音質低下防止などとの関係で非常に重要です。特にMCカートリッジでは、約40ナノワット(出力約0.3mV)と超微少電力であり、それを昇圧トランスとアンプによって最終的には1千万倍くらい増幅してスピーカーから出力されますので、わずかな伝送ロスやノイズも最終的には致命的な結果になることがあります。それゆえに特にこの部分のケーブルは、音質に非常にこだわる人は節約してはいけません。
 XLRケーブルもいくつか集めており、その中から一部を次に示します。実際は、それぞれにL/R用に各1本の計2本ありますが、見やすくするために、それらのうちの各1本のみを写真に示します。時々これらを繋ぎ換えて、音の変化を楽しんだりもしております。高級品は、プラチナや金や銀(あるいはそれらの合金やメッキ)などの貴金属の線材も使われており、外観も見るからに高級感あるものですが、かなり高価なのが問題です。このXLRケーブルを最近はアマチュアも使うようになってきましたが、本来はプロ用・業務用であり、値段よりも性能重視ですので、1本50万円とか非常に高価でも放送局やレコーディング・スタジオならば問題ないでしょう。個人なら大変ですが。とにかくレコード音楽再生では、入力から出力までの増幅率が非常に大きいので、特にカートリッジからアンプまでのケーブルのクオリティは非常に重要なのです。特に入り口に近いほど。







左下の写真: バランス伝送用のケーブルで『XLR → RCAバランスプラグ』
右下の写真: バランス伝送用のフォノケーブルで『フォノDIN 5ピン → RCAバランスプラグ』



カートリッジからイコライザーアンプまでのバランス伝送での音声信号の流れの概念図
(Zonotone社のパンフレットに掲載されている図を借用)



このような純銀製のリードワイヤーもよく使います


 特にレコード音楽再生では、各ケーブルのクオリティは非常に重要であり、全体が良くないといけません。一か所でもローレベルの部分があると、それをボトムネックと呼びますが、それに影響を受け、トータルクオリティがアップしません。また、プラシーボ効果もあって、素晴らしいケーブルを眺めていると、視覚からも満足でき、聴覚と視覚の両方のダブル効果で音楽がより楽しめて、結果的に最高に素晴らしい音となります。



パイプオルガン・レコードの愛聴盤の一部で、よく聴くそのレコード専用のラック


★シュバイツァー博士とパイプオルガンとバッハ

 シュバイツァー博士 (Albert Schweizer: 1875.1.14~1965.9.4) は、当時はドイツ帝国領であったアルザス地方のカイザースベルク(Kaisersberg)で、かなり裕福な牧師の子として生まれました。アルザス地方はドイツとフランスの国境に位置し、度重なる戦争で領土の帰属が交互に実に何回も変わっていましたが、1945年以降は今日に至るまでフランスの領土となりました。そして、最終的なシュバイツァー博士の国籍はフランスです。博士は1912年以来、約50年もの長きにわたって、中部アフリカにある国で西側が大西洋のギニア湾に面したガボン共和国のランベレネ(Lambaréné)で、黒人への医療面などでの人道的支援で大活躍し、1952年にはノーベル平和賞を受賞しており、一般の人には特にこのような面でのシュバイツァー博士は非常に有名ですが、音楽好きにはパイプオルガン奏者やバッハの研究者としてよく知られております。
 博士は、5歳からピアノの指導を受け、8歳でパイプオルガンもやり始めて、その翌年からは村の教会の代理オルガニストを務めました。幼少時代には、オイゲン・ミュンヒにパイプオルガンの指導を受けています。博士の父親が牧師でしたので、幼少の頃からパイプオルガンとは縁が深かったようです。このように博士の人生のスタートは、まさにプロの(宗教)音楽家のものでした。その後、ストラスブール大学、ソルボンヌ大学、ベルリン大学などで神学や哲学などを学んだ後に、パリ音楽院でシャルル・マリー・ウィドールの門下生として、パイプオルガン奏法とバッハの研究に専念しました。そして30歳のときには、その先生の勧めで名著『バッハ』という力作本を出版しました。また博士のパイプオルガンのレコードやCDも何枚か出ておりましたので、その著作の日本語訳の本と共に次に紹介します。この本は、バッハ研究には必読の名著です。このように、博士は学理から本格的に学んだプロのパイプオルガン奏者でもあるのです。その本の中で、バッハのオルガン曲の奏法に関して博士は、非常に鋭い辛辣な意見を書いています。この本の一番最初に、博士とバッハのオルガン曲との出会いを次のように書いてあります。

 『私がバッハのコラール前奏曲を知ったのは、10歳のときだった。アルザスのミュールハウゼンのシュテファン教会のオルガニストのオイゲン・ミュンヒが、土曜日の晩に、翌日の礼拝の準備をしに行くとき、私をオルガンのところへ連れて行ってくれたのである。私は、あのすばらしい ― 残念なことに今は改造されてしまった ― 古いヴァルカーのオルガンの神秘的な音が暗い教会に消えていくのに、深い感動をもって耳を傾けたのであった。』 シュバイツァー


左の写真: 博士の生家のカイザースベルクにあるシュバイツァー邸を陶器で手作りした作品
     (邸内には灯りが点っている。 横幅:約13cm / 奥行:約10cm / 高さ:約19cm) 

右の写真: 博士がアフリカで活躍中の様子をデザインしたハンガリーの記念切手


左の写真: 博士の死を悼む朝日ソノラマの1965年11月発行の特別号
      博士のドイツ語の講演『Das Problem des Friedens in der Heutigen Welt:
      今日の世界における平和の問題』
の力強い肉声がソノシートの1B面の全面に約7分間
      収録されている。普通では博士の肉声を聞くのは容易ではないので、これは非常に
      貴重なもの。【注:朝日ソノラマには”Hentingen”と印刷されているが、それは
     ”Heutigen”の間違いだと思う!】


右の写真: 博士の大作の名著『バッハ』の訳本 (上・中・下の全3巻あり、本文の総ページ数
      は1203ページ)  上段: 本の内部の様子 / 下段: 各巻の外箱(中央下寄りの
      四角い枠内に『バッハ (上)』・『バッハ (中)』・『バッハ (下)』と書いてある)


 博士は、『30歳までは学問と芸術に生き、それから後は直接人類に奉仕する道を進もう!』と決意して、30歳で医学の勉強を開始し、36歳で修了、38歳で医学博士となり、すぐにアフリカの黒人救済のために、上述のアフリカの地へ渡って博士自らが病院の建設作業にも携わり、アフリカの人たちの救済に一生をささげて、『アフリカの聖人』、『密林の聖者』、『ランベレネの太陽』、『20世紀の良心』などと呼ばれて世界的に有名でしたが、90歳で現地で亡くなりました。亡くなるまで勤勉に深夜まで働き続けたとのことです。その功績によって77歳のときにノーベル平和賞を授与されています。博士は、音楽家(パイプオルガン奏者・バッハ研究者など)、神学者、哲学者、文学者、医者などと非常に多彩な超能力者であり、最高に偉大なヒューマニストと言っても過言ではありません。博士を知れば知るほど、尊敬度が増します。これだけ偉大な人物は他には、なかなかいないと思います。
 博士がノーベル賞を受賞した記念にイギリスで発行された銀メダル(実測値:直径3.8cm, 27.12g)を次に示します。このメダルの裏面(写真の右端上部)には、博士のことを、HEALER(治療者)・ HUMANITARIAN (人道主義者)・ THEOLOGIAN (神学者)・ PHILOSOPHER (哲学者)・ MUSICIAN(音楽家)と書いてありますが、これを見るまでもなく博士は実に多彩でした。


博士がノーベル賞を受賞した記念にイギリスで発行された銀メダル

これは別々に撮影した5枚の写真を合成したものであり、ここに掲載した各被写体の大きさの
比率は実物の大きさの比率とは異なる。右下の解説文はメダルに最初から付属のもの。



博士の生誕100周年を記念して1975年にドイツで発行された銀貨と切手 (全て未使用品)


 奈良にある古くて格式高いホテルの『奈良ホテル』には、博士が1922年12月に滞在した時に演奏したピアノが大切に保存されており、その解説も添えて展示してあります。近い所にあるホテルですので、食事に行った時などに何回かそれを見ておりますが、このような偉大な博士の記念のピアノが近くにあるのも感激です。『シュバイツァー博士がピアノなんか弾けたの?』なんて言ってるのを聞くことがありますが、博士のこのような面を知らない人もいるんですねー!
 手元にある博士が演奏するパイプオルガンの主なレコード(30cmのLP盤)とCDを、以下に紹介しておきます。博士の経歴や業績をよく知っていますので、先入観もあるのでしょうが、博士の演奏は高尚で暖か味のある人間性豊かな素晴らしいもののように感じます。









博士が演奏するパイプオルガンのレコードの実例
最上段の右端のB面のみがメンデルスゾーンの曲で、それ以外はすべてバッハの曲: BWV。
2段目と3段目の右端のジャケットは同一のように見えるが、レコード番号や内容は別物。
最下段の左端はロシア製のやや珍しいもの。最下段の中央と右端は、各3枚組の箱入。


次に示すのも博士が演奏するバッハのパイプオルガン曲を収録したレコードです。





最上段中央の写真: クラシックにしては珍しい赤色透明のレコード盤とそのジャケット(左側)
最上段右端の写真: 最上段左端のジャケットとよく似ているが内容は全く別物
最下段左端の写真: 2枚組、  最下段中央の写真: SP盤でA面のみ博士の演奏
最下段右端の写真”Great Keyboard Players of The Century”というタイトルで、ジャケットに白い矢印を付けたのが博士の写真。A面の最初に博士のパイプオルガン演奏曲が入っている。その他に、ピアノのCortotHorowitzら総計8名の歴史的に有名な鍵盤奏者の名演奏が収録されている。

以下は、博士の演奏するバッハのオルガン曲のレコードの追加です。




2015年の年末にニューヨークで買った博士の演奏するバッハのオルガン曲のレコード
(上記のレコードとほぼ同一のジャケットのがあるがVol. No.が異なる)



 博士が演奏するバッハのパイプオルガン曲を収録したCDも何枚もありますので、その実例を次に示します。

①は4枚組、 ②は3枚組、 他はすべて1枚のみ、 ⑦は”The Greatest Artists of SP Era”というタイトルで、最後の15曲目と16曲目のみが博士の演奏、 ⑧は”LAMBARENA - Bach to Africa” というタイトルで、バッハとアフリカのガボン民族音楽の美しきコラボレイト作品の珍しいもの (注: ガボンは博士のアフリカでの勤務地)


この項の最後に博士の名言の一つを紹介します(英語版です):
There are two means of refuge from the miseries of life: music and cats. - Albert Schweitzer
(人生の惨めさから脱け出す2つの方法は:音楽と猫だ。)
 ちなみに博士の愛猫の名前は ”Sissi” (シシー)です。これはオーストリア皇后の愛称と同じです。


 一例を次に示すような、2トラ38(ツートラ・サンパチと呼ぶ)のオープンリールテープに入っているパイプオルガンの音は、裸特性が実に素晴らしくて最高なので、ずっと以前には、このようなテープをよく聴いていました。しかし、問題は市販されているソフトがごくわずかしかなく、しかも当時レコードの10倍くらいと非常に高価である点と2トラ38のオープンリールテープなので、再生装置がプロ用で非常に大きく・重くて大げさで、とても一般向きではありませんでした。いくら音が良くても、現在、これを使っているアマチュアは、ほとんどいないと思います。業務用には、さらに上のテープデッキがあります。



ずっと以前にはこのような2トラ38のテープでもパイプオルガンをよく聴いていました。
とても素晴らしいリアルな音です (リールの直径は約27cm)。
このテープのタイトルは『ある愛の詩 パイプ・オルガン・イン・ジャズ』です。


 さらに次に別項として『モーツァルト』や『ジャズ』のことを上記と同様にして書こうかなと思っています。これらについても、かなりの国際的な情報を持っておりますので。しかし、現在は本職(副業?)が忙しくて、執筆はなかなか大変ですが。

Viva Organ Music and Balanced Connections!


上記のようにしてパイプオルガンのレコードを聴くと、実に素晴らしい音がします。
レコードの秘めたるパワーは、本当に凄いです。
しかし、いくら頑張っても、いくらお金を投資しても、生には絶対に勝てませんが。


【重要な追伸】

★トーンアーム内の『極細リード線』について

 前回の原稿の『レコード音楽を真空管増幅・バランス伝送で聴く』で書きましたが、カートリッジからの音声信号を受けるトーンアーム内の『極細リード線』は、まるで髪の毛のように細く、しかもトーンアームによっては、その付け根の部分を横か後ろから見ると、このリード線がむき出しのままで少しだけ見えるのもありますので、ノイズの混入の面からも、その次からいくら8N-Cuとかの太くてシールドも完璧で立派な高価なケーブルにしても、その前がこんなに粗末な線ではアンバランスでダメだと思いました。しかし、エレクトロニクス工作が大好きで何でもトライして実験してやろう人間の私が、この極細のリード線を太くて立派なものに交換したり、トーンアームの付け根付近の外から見えるこのリード線の部分にシールドを施してみました。その結果、なんといずれもダメで、やはり『極細リード線』の意味がわかりました。すなわち、このリード線を太くしたり、せめても細いままで『極細リード線』の見える部分にシールドを施すとどうなったかですが、トーンアームの付け根の部分が物理的に自由に抵抗なしに回転することができず、針先が時々うまく溝を移動・トレースできなくて、引き戻され、その時に『ボコン・ボコン』とまるで遠くで雷が鳴っているようなノイズが数回連続で何回も出ます。レコードの溝を針でトレースするのは、非常にデリケートであり、トーンアームの回転がわずかに重くなっただけでもダメのようです。これでは針先やレコード、さらにリスナーの精神的にも良くありません。特にこの現象は低針圧でよく発生します。私はレコード保護のために1.5gくらいの低針圧が好きなので、4gなんて問題外なのでダメですが、4gにすれば多少ましになるでしょう。ノイズ防止・音質向上の目的で試したことが、こんなことになってしまい、全く話になりませんでした。やはり『極細リード線』の意味があったのです。実際に試してみて納得しました。皆さんもこれを参考にして、無駄なトライはしないようにしてください。


★『ハム・ノイズ』について

 特に『XLR→RCAケーブル』を自作したりしてレコード再生をする場合に問題になるかと思いますが、GNDやアース線(トーンアーム、シャーシー、各装置)の処理を適切にしないと、スピーカーから『ブーン』という連続したノイズ (これを『ハム・ノイズ』と呼ぶ) が発生することがあります。特に無音時にボリュームを上げると、それがよく目立ちます。GNDやアース線をうまく処理すると、それが消えますので、フローティングにするか落とすか、色々とトライして、ハム・ノイズフリーの快適なレコード音楽をお楽しみください。