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健康長寿にかなり貢献しそうなレスベラトロールについて

 筆者の座右の銘・モットーは『健康がすべてではない。しかし、健康がなければ、すべてはない。』であり、人生で最も重要なものは健康であると確信しております。それ故に、健康増進・疾病予防・健康長寿に関する多面的な研究をずっと行っており、それに関する原稿の執筆や講演などを頻繁に行い、さらに健康増進グッズの開発と商品化も多数行っております。間もなく市販する商品もいくつかあります。
 健康長寿の秘訣としては、ずっと以前から抗酸化(活性酸素の消去)が叫ばれており、さらにそれに加えて精神的ストレスの解消も重要視されてきました。そして最近になり、今までの上記2つとは全くメカニズムが異なる『第3の長寿の秘訣』として、『長寿遺伝子の活性化』が大きな話題となってきました。以上が健康長寿の三本柱ですが、それとは別枠なものとして、『早期発見・早期治療』があります。三本柱を実行して、いくら予防に注意していても、どうしてもある確率で病気になりますが、たとえ一般的な病気の中で一番厄介な病気である『がん』であっても、早期発見・早期治療すれば、助かる確率が非常に高いので、健康長寿のためには、これは必須の項目です。


 この長寿遺伝子は、別名として『サーチュイン遺伝子・長生き遺伝子・抗老化遺伝子』などとも呼ばれております。これは酵母で最初に見つかり『Sir2』と命名されました(1999年)。その後、線虫、ショウジョウバエのような下等動物から人を含む哺乳類のような高等動物に至るまで、広く見つかっております。人を含む哺乳類の長寿遺伝子は7種類見つかっており、『SIRT1〜SIRT7』と命名されております。
 これらの長寿遺伝子は、どのようなタンパク質をコードしているか(何の設計図なのか)と言いますと、『Sirtuin』というタンパク質であり、これは『ヒストン脱アセチル化酵素』なのです。しかし、筆者は研究室のセミナーなどで、この領域の勉強をよくしておりますが、専門外の方々には何のことかお分かりにならないのではないかと思いますので、簡潔に分かりやすく解説しますと、遺伝情報が書いてある遺伝子DNAは、核酸という名称からも分かるように酸性であり、染色体というものに組み込まれている紐状のもので、ヒストンという塩基性の核タンパク質に巻き付いて安定化しております。このヒストンがアセチル化されている状態では、ヒストンとDNAの親和力・結合力が弱まり、DNAがよく働けるようになって遺伝子発現が活性化されます。逆にそのアセチル基をヒストン脱アセチル化酵素で取り除くと、DNAがヒストンに強く巻き付き、遺伝子がいわば休眠状態のようになって安定化し、活性酸素などの攻撃を受けにくくなり、DNAの損傷が防げるのです。従って細胞の寿命も長くなり、長生きできるというわけです。


 ところが、普段はこの長寿遺伝子は発現(活性化)しておらず、眠った状態にあります。それでは、どうすればその眠りから起すことができるかと言いますと、『カロリー制限(特に炭水化物による)』すなわち最近よく言われている『腹七分目』です。なので、食堂で『ライス大盛り!』なんて注文してはいけません。カロリー制限で長寿になるというのは、飢餓状態から身を守る古代の生体防御作用の名残りかもわかりません。さらに近年大きな話題になってきた『レスベラトロール』の摂取による長寿遺伝子の活性化があります。ただし後述のように、効果が出るには、かなりの量が必要ですので、食品から必要量を摂取するのは無理で、レスベラトロールが濃縮されたサプリメントを摂取する必要があります。嬉しいことに、無理に食べる量を控えてカロリー制限(腹七分目)をしなくても、普通の量食べていてもレスベラトロールを摂取すれば効果があるとのことです。長寿遺伝子の活性化のことだけを考えるのであれば、腹七分目を実行しておれば、レスベラトロールを摂取しなくてもよいことになります。ただし、ほとんどすべてに当てはまりますが、いくら健康に良いことでも、逆に悪いことでも、たまにしかしないと良い効果も悪い効果も出ません。すなわち、時々腹七分目をしてもダメですし、時々レスベラトロールのサプリメントを摂取する程度ではダメで、『毎日のように継続して実行することが必要』なのです。しかし、腹七分目を毎日実行して、長寿遺伝子を活性化するのは、普通ではなかなかできないことだと思います。やはり、他にも色々な素晴らしい作用のあるレスベラトロールのお世話にならないといけませんねー。
 このように素晴らしい作用のあるレスベラトロールですが、少し前からアメリカでは一般の人たちにも話題となり、今やドラッグストアには、非常に多種多様なレスベラトロールのサプリメントが市販されており、よく売れております。日本でも遅れてつい最近になって話題になってきました。では、レスベラトロールはどのような食品に多く含まれているかと言いますと、決してブドウに特に多いのではなく、特別に高含量なのはメリンジョ果実(約40mg/g)で、以下イタドリ根乾燥物(約5mg/g)、ピーナッツ渋皮(約6μg/g)、サンタベリー(約6μg/g)、ブドウ果実(約3μg/g)、ブルーベリー(約1μg/g)、クランベリー(約0.9μg/g)などです。
 特に赤ワインとの関係が話題になっていますので、ブドウのレスベラトロール含量の全体像の概要について述べますと、品種や栽培方法、収穫時期などによってかなりの差があり一概には言えませんが、ある分析での結果の概数は以下のようです:生の状態の果実では白ブドウでも赤ブドウでも大差はなく、果実の部位別では、果実全体(約2μg/g ← メリンジョ果実の何と1/2000しか含まれていない)、種子(約15μg/g)、果皮(約0.2μg/g)、果汁(約0.5μg/g)。ブドウの茎(約28μg/g)、ブドウの葉(約9μg/g)、赤ワイン(約3μg/g)、白ワイン(約0.4μg/g)。このようにブドウでは茎における含量が一番高いようです。なお、ブドウの木がレスベラトロールを作る理由は、紫外線傷害(活性酸素が発生する)や菌の感染から自分を守るためと考えられています。ちなみにレスベラトロールには、抗酸化作用や抗菌作用もあります。しかし、以上の各含量を比較すると、レスベラトロールとブドウ果実や赤ワインと直結するのは短絡的過ぎると思います。やはり下記の『フレンチパラドックス』の情報の影響が大きいのでしょうか。
 メリンジョとは、和名はバイマイトウで、学名はGnetum montanumといい、インドネシアに広く分布している高木で、最大22mくらいの高さになり、ドングリの実くらいの大きさ・形の黄色〜赤い実が年に2回なります。その学名から『グネツム』と書いてある場合もありますが、『メリンジョ』と同じものです。インドネシアでは『生命の樹』と呼ばれており、古くから健康に良いとされていて、長生きと勇敢に生きる素と考えられてきたようです。
 次にイタドリですが、これは日本でもよく見かける野草で、スカンポとも呼び、筆者もこの筒状の若い茎の皮をむいて食べたことがありますが、酸味のある味がします。この汁を傷口に塗ると止血作用があり、さらに痛みが取れるので『痛取り』から『イタドリ』という名称になったんだそうです。子供の時に、あまり食べ過ぎるといけないと言われましたが、その理由は緩下作用や利尿作用などがあり、下痢をするからかと思われます。これは『虎杖根』(こじょうこん)という漢方薬にもなっております。イタドリには『エモジン』という医薬品成分で摂取し過ぎると下痢などの症状を招くものが含まれているために、日本ではこれを原料とする健康食品の製造販売は、薬事法で禁止されております。レスベラトロールの原料としては、とても安価なので、市販のレスベラトロールのサプリメントで、原料名が記載されていない安価な二流品や輸入品は、禁止されているイタドリを原料にしている可能性がありますし、使用が禁止されているアセトンで抽出したものもあるようですので、購入の際には注意して下さい。
 欧米人は、動物性脂肪を多く摂取していて、フランス人も同様であるにもかかわらず、他の国に比較して動脈硬化や心疾患が少ないのは、赤ワインをたくさん飲んでいるからではないかという説があり、それは主に赤ワイン中のポリフェノールによると思われています。これが『フレンチパラドックス』と呼ばれているものです。ただし、これは統計の取り方に問題があり、フランス人が特に上記のような疾患の罹患率が低いとは言えないとする説もあります。
 赤ワイン中には、レスベラトロールも含まれており、赤ワインをよく飲むと健康長寿に貢献すると当初は考えられましたが、含量的に見て、いくら赤ワインを飲んでもレスベラトロールによる長寿遺伝子の活性化効果は期待できないことがすでに分かっており、それが目的で赤ワインをたくさん飲んでも効果はありませんので、ご注意下さい。赤ワイン中のレスベラトロール含量は0.2〜5.8mg/l程度であり、レスベラトロールは1日あたり200〜600mgくらいを摂取するのが望ましいとのことですので、この量を赤ワインから摂取するとなると、少なくとも毎日34リットルも飲まないといけないことになり、この量を赤ワインから毎日摂取するのはとても無理なので、サプリメントで摂取するしかありません。もっとも1日10mg以上という説など色々あり、真の必要量はまだ確定しておりません。ただし、レスベラトロールには女性ホルモンのエストロゲン様作用や抗血小板作用のあることが知られておりますので、それに関連する疾患(乳がん、子宮がん、血液凝固関連疾患など)のある人では、過剰摂取するのは問題かと思われます。
 レスベラトロールの名前の由来ですが、レゾルシノール(Resorcinol)の構造を有し、バイケイソウ(学名:Veratrum albus)から最初に見つけられた化合物であり、化合物の分類上は、レスベラトロールはOH基を有するアルコール類であることから、アルコール類の名称の語尾にはolを付けるという化学の世界での慣例があります。すなわち、この赤字の部分を繋ぎ合わせると、見事にそのままでピタリとResveratrolそのものになります。ここで注目すべきことは、レスベラトロールを最初に発見し、構造決定したのは、なんと日本人の北海道帝国大学理学部の高岡道夫先生で、1939年のことでしたが、その当時はまだ、この新規な化合物の健康に寄与する作用などは全く知られていませんでした。それが分かったのは、2000年頃以降のことです。
 レスベラトロールの構造式を次に示しますが、この構造式で、左下のベンゼン環にOH基がメタ位に2個付いた部分の化合物がレゾルシノールです。



トランス‐レスベラトロールの構造式
この構造式の中央部分の構造がトランス体になっているものは化学的に
安定であり、製品化されているものは主にこのトランス体。

 マウスなどの動物実験の結果などから、レスベラトロールにはアルツハイマー病、神経変性疾患、動脈硬化、心不全、抗がん、抗炎症、認知症、糖尿病、放射線障害、肥満、炎症性腸疾患、廃用性筋萎縮症、美白などに効果があるであろうとされております。ポリフェノールの一種であるレスベラトロールには抗酸化作用もありますので、さらにその作用に基づく色々な効果は当然あるはずです。
 次にその一部分の写真を示すように、ニューヨークのドラッグストアでは、実に豊富な種類のレスベラトロールのサプリメントが市販されており、ニューヨークにいる私の親友夫妻を含むニューヨーク市民は、レスベラトロールをよく飲んでいるようです。このサプリメントが、ニューヨークにたくさん売っていることをその夫妻に最初に教えてもらい、それ以来ニューヨークでよく買ってきて、毎日飲んでおります。アメリカでは一般に1カプセル中の含量は、100mg, 250mg, 500mgなど、いくつかの種類があります。ニューヨークで2012年1月に健康食品やサプリメントの調査などを行った時に、実際にドラッグストアで買ったものは、赤ワイン用のブドウから抽出したレスベラトロール250mg入りのカプセルが60個入った一瓶が35.99ドルでしたので、日本円では約2800円です。日本の製品は、まだ少ししか種類がありませんが、アメリカに比べると、かなり高価です。購入の際に注意してほしいことは、たとえば100mgのカプセルと書いてあっても、レスベラトロールを含む粉末全体の重量が100mgで、その中に実際に含まれているレスベラトロールは10mgくらいというような商品もあるようですので、パッケージの説明文をよく読んでから購入しましょう。

ニューヨーク市内のドラッグストアで売っている
色々なレスベラトロール
(2012年1月に撮影) 
 2012年1月にニューヨーク市内のドラッグストアで買ってきた赤ワイン用のブドウから抽出したトランス-レスベラトロール250mg入りのカプセル60個入りで35.99ドルでした。

 10円玉と比較すればわかるようにこの
カプセルは大きめなのでやや飲みにくい
   カプセルの中身を取り出したところ

【追伸】その後の研究で、寿命延長にSirtuin遺伝子は直接関与していないとの説が出されており、レスベラトロールの寿命延長効果は、抗酸化作用などによるものである可能性もあります。もしも抗酸化作用のみによるものであれば、他に抗酸化作用の強い食品やサプリメントがたくさんあるので、わざわざレスベラトロールを摂取する必要はありませんが、他の作用と複合的に働いている可能性もあり、現時点ではまだ結論は出せません。結論を出すには、今後さらなる研究が必要であり、最終的には、実際にヒトにおいてどうなるかということが最も重要です。もう少し様子を見てから、上記原稿の改定をする予定です。



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